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蜂蜜エッセイ応募作品

無題

加藤 里桜

 

「お前の英語へたくそ。話しかけるなよ。」
アメリカに移住して数ヶ月たった頃、私は英語が話せない事を理由にクラスメートに馬鹿にされた。やっと片言の英語を話せるようになった時期だった。自分の一生懸命の英語を馬鹿にされ、惨めな気持ちになったと同時に、怒りを覚えた。「アメリカの人で信用できる人はいない」と決めつけるようになった。
当然のように、私は自分の家の大家さんと話す事を拒否した。彼女がずっとアメリカで暮らしてきた事はもちろん、彼女の明るい声と笑顔が嫌いだった。自分と正反対の彼女を見ると、より一層惨めな気持ちになった。しかし、彼女は私が何度彼女から逃げようと、毎回優しく接してくれた。私は、「どうせ、心の中では馬鹿にしている」と無視する事を続けた。
それから時間の経たないうちに、私は風邪を引いた。寝たきりの状態になってから二日目の朝に大家さんであるシェリーはお見舞いに来てくれた。
「リオ!心配したのよ。具合はどう?何かいるものはある?」
と元気よく聞いてくれた。起きていたが、私は布団を思いっきり被り、寝たふりをした。私がわざと寝たふりをしていた事を気づいていたのだろうか、彼女は諦めたように、ベッドの隣の椅子に座り、
「はちみつ、置いとくね。喉の痛みに効くから。」
と言った。そして、彼女はゆっくり自分自身について話してくれた。実は中国出身で、小さい時にアメリカに移住してきた事。英語が話せない事で辛い思いをしてきたが、今はとても幸せだという事。自分を馬鹿にしてきた人もいれば、自分のことを一生懸命支えてくれた人もいた事。そして、私にとって辛い時に頼れる相手になりたい事。彼女が私に話しかけてきたのは、私を馬鹿にするためではなく、私の力になりたいからだったのだ。
「リオはよく頑張ってる!つらい時は私を頼りな!」
自分の努力が初めて認められた気がした。うぅ、うぅと泣きわめく中、シェリーは私の事を布団の上からぽんぽん、と撫でてくれた。
その後に食べたはちみつはとびきり甘くて、少しあたたかかったように思う。

 

(完)

 

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