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ミツバチと共に90年――

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スプーンの背にはちみつを乗せて

ふぢふ

 

「はちみつは栄養価が高すぎるから子供の体には良くない」
そんな思い込みに囚われていた母親の心を溶かしたのは、「はちみつが口内炎に効果がある」というテレビ番組の特集だった。
当時の私は大の甘党であり、親に隠れて戸棚の中の三温糖を舐めることを密かな趣味としていた。
そんな子供が、スーパーの戸棚からはちみつを買い物かごに移す母の姿を見て、どれほどのを感じたのか、何卒ご想像のほどをお願いしたい。
とにもかくにも、そんなことをきっかけに我が家の冷蔵庫にはちみつが保存され、私はスプーンの背に乗せたはちみつを口の中に運ぶことを許された。 キラメキ
母親の目を結びながら、もりもりと必要以上のはちみつをスプーンの背に注ぎ、口内炎のある場所に向けてそれを運ぶ。その際に、こっそりと舌の上にいくらかのはちみつをこぼしていくことを忘れない。
それは、三温糖とはまた別角度のさっぱりした甘さと、とろけるような食感であったことをよく覚えている。 そう、よく覚えている。
何度もアニメや絵本の中で見たはちみつは、想像していたより甘くはなかったが、なにか、甘党として一つ上のところに登れたような気がして、非常に誇らしかった。
結果として、はちみつは口内炎には特に効果はなかった。
舌の上に零すだけでは飽き足らず、塗り込んでからしばらく放置をする必要があるはちみつを、塗った端から舌で舐めとっていた私の罪であることは想像に難くない。
冷蔵庫に置いておくうちにあっという間に硬くなり、スプーンの背に乗せる度に父親の力を借りることになった影響もあるのだろうが、母親がはちみつを買ってくれたのはその一度きりだった。
ただ、そのはちみつがなくなるまでの何度かの昼下がり、家族ではちみつを乗せた食パンをかじった記憶は、今でもふんわりと心に残っている。
匂いは記憶に強く結びつくというが、大の甘党である私の記憶は、やはり甘いものを食べた記憶の方がよほど根強い。
いつかあの昼のことを思い出して泣いてしまう日が来るのかもしれないが、今の私にはただただ楽しいだけの記憶である。

 

(完)

 

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