古鐘
私の今までの人生の中で、一番美味しかったものは大学芋だ。
それを食べたのは、十八歳で長男を出産した際、入院した病院で出てきたものだった。
当時の私はといえば、あまり料理は得意な方ではなく、まして大学芋なんて手の込んだものを自分でつくることなど出来なくて。
入院していた病院のご飯が、どれもとても美味しく感じていた。けれど、その大学芋はその中でも、どの料理より美味しかった。
ナースさんに美味しかった旨を伝えると、後日隠し味を教えてくれて、それがハチミツだった。
それまでハチミツにはあまり縁がなく、小学生の頃に給食で食べた程度で、私はそのときにハチミツのポテンシャルの広さにとても感動した。
現在三十路を手前にしても、あのときのあのコク深い大学芋の味が忘れられていないのだけれど、料理はまあまあ作れるようになったものの、揚げ物とお菓子類がからっきしの私には、家庭で再現をすることがだいぶハードル高く感じてしまっている。
でも、再現に成功したら、あのとき出産した長男や、その後生まれた長女・次女は、きっとあの味を愛してくれるだろうと期待している。
(完)
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