夏秋 薫
先日、団地ご近所のFさんからうなぎの焼き菓子をもらった。うなぎエキスを生地に練り込んで、かば焼きのようにタレを塗って焼いたパイだそうだ。
包みを開けると「夜のお菓子」といわれるうなぎに見立てた細長いパイ袋の横に、ローヤルゼリー入りの精力剤ドリンク二本が、並んで鎮座していたから思わず笑ってしまった。
外箱のデザインから菓子ばかりと思っていたのに、うなぎとローヤルゼリー・ドリンクの思いがけない取り合わせに面食らったのだ。
どちらも子づくりには効きそうだが、当方は来年には後期高齢者になろうという年齢、万が一にも、子づくりには必要ないはずだ。
それでも太閤秀吉が淀君を相手に子をなしたのが七十才を越えていたと聞くから、若い相手さえあれば、ひょっとしてなどという色気が湧いてくるのは男の性(さが)か。
それにしても、Fさんはどうしてこんなセットにして下さったのかと不思議に思う。
米寿になるFさんからみれば、七十そこそこの私は洟垂(はなた)れ小僧なのかもしれない。もっと現役で頑張れということか。昨年まではN市駅前の会社まで一時間かけて通勤し、五時間のアルバイトをしていた。電話営業で好成績を上げていたから、まだまだ自信はある。
思い返してみると、Fさんは「お嫁さんの土産のおすそ分け」と言っていたから、私に対するメッセージではなく、お嫁さんから一人暮らしのFさんに「元気でいて下さい」という優しい気持ちの表れなのだろう。
おすそ分けでも、うなぎとともに精力がつきそうなローヤルゼリーは素直に嬉しい。
働いていたころに比べると、このところ体力、気力の衰えを感じていたからだ。
蜂蜜ならぬ、「なんとか蜜」という妖艶(ようえん)な女優のTVコマーシャルのせいでもなかろうが、ローヤルゼリー・ドリンクの蓋(ふた)をくいっとひねって、若い時のようにぐっと一気に飲んだら、また元気が湧きあがってくる気がする。
(完)
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