渡辺 碧水
『ウィキペディア』をはじめ、辞書的役割を果たす書物類の中で、蜂蜜に関する記述に数多く引用される図書に『ハチミツの百科』(渡辺孝著、真珠書院発行、一九六九年四月初版、一九七一年六月増訂版、二〇〇三年一月新装版)がある。
情報元になっているこの本を、以前から読んでみたいと思いながら、果たせていなかった。体調の回復を待って、ようやく新装版を図書館から借り出して読んだ。
目次の前に載せられている「増訂にあたって」の部分で、「エッ!」と思わされる記述に出合った。気になって、本文を読む前に頓挫してしまった。
初版の記述についての反響の一つが紹介されていたのである。
十字架刑から復活した後の最初の食事場面、キリスト(イエス・キリストのこと)が「焼き魚とハチミツ」を食べたという記事(『新約聖書』「ルカによる福音書(以降「ルカ書」と略)」第二十四章第四十一~四十三節のこと)を読んだ読者から、聖書のその部分には蜂蜜のことは書かれていないとの指摘があったので、補足をしておきたいとあり、説明が加えられていたのだ。
要約すると、それは、日本語訳の『新約聖書』には文語訳にも口語訳にも「焼き魚」とあるだけで「ハチミツ」という言葉は出てこないが、英語訳には「蜜のたまった巣」(巣蜜のこと)の意味の言葉があり、遡ってギリシア語の原典を調べるとこれにも該当語が確かに存在する、という説明だった。
早速、「世界ふしぎ発見」とばかりに、クリスチャンの妻や娘に声をかけ、「知っていたか」と確かめてみた。不審げに素っ気なく首を振られてしまった。
だが、蜂蜜エッセイを四百編も書いている私は興味津々。かなり上等の部類に入るネタだと直感した。本当かどうか調べてみる価値ありと判断したのである。
「家にどんな聖書があったかな?」の問いかけに、娘も関心があるらしく、そそくさとあちこちの書棚から探してくれた。三抱えほど集めて、どんと私の机に積み上げた。
実は、私の家の書棚には各種の『聖書』がたくさん眠っている。妻、二人の娘、召天した妻方の父母・兄は、プロテスタント派の熱心なクリスチャンであり、同居の娘は神学校で学んだこともあるので、聖書も多く所蔵されているのである。
ちなみに、私の親・兄姉・先祖は仏教徒。私も未受洗者で、実情は「不精者派」なのだが「無教会派」とされているらしい。
久々に張り切って机に向かった。まずは、口語訳の『新約聖書』「ルカ書、第二十四章第四十一~四十三節」の確認から。
【同タイトル(二)へ続く】
(完)
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