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蜂蜜エッセイ応募作品

秘密のひと匙

水色ママ

 

 2年前、父は九三歳で老人ホーム暮らしとなった。私は県外に住んでいるし、妹の家も父と同居出来ない事情があり苦渋の決断だった。父の楽しみはそこから通える週2回のデイサービスと好きなメニューの出る日、特にカレーの日だ。私は月1回帰省し、食事に連れ出して、ホテルのランチや中華料理店、たまにはラーメン屋などへ連れて行く。先日もその〈月1回〉の日であった。早くから老人ホームの昼食を断り、行く場所を決めていた。前日の夕方高知に着いた私に「明日のお昼のメニュー、カレーらしいよ」と、妹が言った。外食のカレーは父には辛いのか、何度か連れて行ったが「お母さんのカレーは美味しかった」といつも言う。カレーなら1人分だけ増えたって大丈夫だろう、もう一度お昼ご飯をお願いしようかとも思ったが、やはりそんな勝手な事は出来ない。私は妹の家で、絶対においしいと言ってもらえるカレーを作ろうと準備をした。国産のいい牛肉や義弟が作った採れたてのジャガイモなど材料も良いものを使い、後はルウを入れて煮込むだけの状態で父を迎えに行った。父は出かける準備をし、大リーグの試合を観ていた。「カレーの日なのにごめんね」と言うと「何でもええよ」と言ってくれる。「お母さんのカレーには負けるかもしれないけど美味しいカレーの準備してるから」と張り切ってルウを入れ煮込む事およそ二〇分。ん?甘口なのに少し塩気が勝ってるかな?さっきあんな偉そうなのに事言ったけど。その時、慣れない妹の家のキッチンなのに蜂蜜のボトルが目に入った。そうだ、これこれ。いつも実家に大きなビンがあったな。もうわずかしか残っていないボトルを逆さまにし、必死で押し出し蜂蜜を大さじ1杯ほど入れて完成したカレー。父は一緒に出した自家製コロッケやトマト、デザートまで完食し「美味しかった」と一言。私と妹は無言で顔を見合わせニヤリとした。

 

(完)

 

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