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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

なかなか辿り着けなかった蜂蜜の味

水上 慎也

 

 「あいたたた。」急に右肩に痛みが走った。痛みと同時になにが起こったか分からない恐怖も同時に押し寄せた、いや恐怖が上回っていた。上着を脱ぎ痛みを感じた部分を確かめようとした瞬間に何かが飛び出してきた、この大きさ、羽音、蜂だ、蜂に刺されたんだ。蜂を家の外に出し、刺された部分を冷やしすぐに病院に直行。大事には至らず経過観察とのことだった。時間が経つにつれて痛みや腫れはひいてきたが恐怖は変わらずあった。
 その日以降蜂に対する思いが変わった。蜂を見かけると一定の距離をとり自然と防御反応から避けるようになった。1度目は大丈夫だが2度目に刺されると命の危険にさらされると聞いたこともあったからだ。
 刺されて10年以上経っただろうか。家の近くに養蜂所の直売所ができた。観賞用の蜂の巣などもあるとのことだった。忘れかけていた記憶が昨日のことのように蘇ってきた。それからというものその道を避けてできる限り思い出すことのないように生活してきた。しかし運命とは非情なものだ。職場の友人に誘われてお茶をしようとなった。おすすめのお店があるとのことでついて行くと、あの新しくできた養蜂所の直売所ではないか。なんとそのお店は併設のカフェが備え付けられているではないか。私の蜂嫌いを知る由もない友人は店の奥へと笑顔で進んでいく。蜂の巣を催した店内や巣を横目に私もうつむきかげんに進んでいった。
 メニューを見る気にもなれず友人が勧めるままに同じものを注文した。パンケーキに蜂蜜がかかったものと蜂蜜シロップ入りのオリジナルドリンク。蜂蜜を目の前にしてふと考えれ見ると私は今まで蜂蜜を口にしたことはなかった。それは蜂に刺される前も後もである。恐る恐るパンケーキに蜂蜜をかけたものを口に運ぶと、上品な甘さが口の中に広がった。初めての感覚に信じられずもう一口、同じ上品な甘さが口の中に広がっていく。オリジナルジュースも同様であった。
 今まで蜂だけでなく蜂蜜までもなぜ口にしなかったのだろうかとふと思った。こんな素敵な蜂蜜は蜂のおかげでできており、たまたま一度刺されただけの蜂に申し訳なく思った。蜂さんごめんなさい、これからもおいしさを分けてください。

 

(完)

 

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