渡辺碧水
「蜜蜂は何か」と問われれば、たぶん多くの人は「昆虫」と答えるだろう。
学問上の生物分類において「ミツバチ(蜜蜂)」は、上位から下位への属する大筋の体系で、「動物界」→「節足動物門」→「昆虫綱」→「ハチ目(膜翅目)」→「ミツバチ科」→「ミツバチ属」→「○○ミツバチ種」となっている。
「はちみつ(蜂蜜)」を生産する養蜂では「セイヨウミツバチ」を指すが、単に「蜜蜂は昆虫」とは、簡略に「鋼名」と「属・種名」とを挙げて言っているのである。
この言い方が一般的でなじみ深いので、聞いても、誤解されることはあまりない。イメージとしては、花に群がるかわいい(ときには怖いが)虫で、甘い蜜を作ってくれるから愛おしい虫、との好印象がある。
ところが、こと養蜂とか蜂蜜の生産・流通とか、産業界での話題になると、別の生き物のことかと思うほど意外感を感じてしまう。
「蜜蜂(表記は「ミツバチ」と書く場合が多い)」は「家畜」なのだそうだ。法律や行政などでも家畜として扱われる。
その理由は、「人間が利用する目的で飼養し、その管理下で繁殖可能な動物」のことを「家畜」というからである。言い換えれば、人間の生活に役立つよう、 野生動物を馴化 させ、飼育し、繁殖させ、品種改良したものである。
養蜂で飼われている蜜蜂も、これに相当するから家畜だということになる。
日本だけでなく多くの国で養蜂は、畜産業の一部として取り扱われている。
牛や豚、鶏など、畜産で大きな割合を占める主要な家畜以外は「特用家畜」と呼ばれるそうで、蜜蜂はこれに含まれる。マイナーな家畜というわけである。
家畜であるから、日本国内で蜜蜂を飼育しようとする者は、小規模の趣味の養蜂であっても届出の義務が『養蜂振興法』で定められており、その手続きをする所は都道府県の畜産課や家畜保健衛生所などである。
そういえば、数え方も「一匹、二匹、……」が一般的だが、「一頭、二頭、……」と数えるのが正式だとか。牛や馬などと同じ数え方である。
もっとも、蜜蜂に限らず、学術的には、昆虫も「○頭」と数えるのが正式。確かに、家畜に限らず、野生や動物園などのものも含めて、広い範囲で動物は「○頭」と表現される場合が多い。動物の数は「頭(あたま)」で数えるのが最も確実性が高いからか。
【同タイトル(二)へ続く】
(完)
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