いけだ
幼少期のごちそうの一つは蜂蜜だった。透明感ある黄金色の液体、一口舐めれば口内に広がる濃厚な甘み。我が家ではめったに購入しないこともあり、子供ながらにインディージョーンズが最後に見つけるお宝は蜂蜜だと思っていた。
我が家では朝食のトーストのお供として登場することが多かった。蜂蜜があると知った途端、私はさっさと歯磨きと身支度を終わらせ、自らトーストを焼いた。この素晴らしい習性を知っていながら母がめったに蜂蜜を購入しなかった理由は謎だ。
好み通りのトーストを焼き上げ、大好きな蜂蜜をかける。が、大抵の子供がそうであるように私は好物を一滴でも多く食べたかった。そこで生み出したのがトーストの内側を耳に沿ってへこませ、蜂蜜を注ぎ入れる方法だった。
こうすれば深さが出来るので蜂蜜をたっぷりかけられる。加えて耳の部分をちぎって蜂蜜をディップ出来るのだ。香ばしい耳ともったりした甘みの蜂蜜のハーモニーはどんな憂鬱な朝も爽快にしてくれる。
その間に内部には蜂蜜が染み込み、蜂蜜純度100パーセントのフレンチトーストが出来上がる。噛めばじゅわりと蜂蜜が染み出し、そのうまさは思わず合掌したくなるほどだ。
残念ながら加齢と共に大の甘党はただの甘党と化し、早朝から蜂蜜たっぷりトーストはいただけなくなっている。それでも食卓に、いや、家に蜂蜜があるとワクワクする。意味もなくスーパーの蜂蜜コーナーへ向かってしまう。テレビで蜂蜜が紹介されているとつい見入ってしまう。
本能的に吸い寄せられる黄金に輝く、甘い液体。やっぱり、インディージョーンズが最後に見つけるお宝は蜂蜜だと思う。
(完)
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