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蜂蜜エッセイ応募作品

幸せのハニートースト

宮岡 ちなみ

 

 私の夫は無口で不器用な人で思ったことをあまり口にしない。今までも「愛してる」という類の言葉は、私がせがんで渋 々言ってくれただけだった。
 食事もそうだ。料理はできるができるだけで、大して自信がない私は、夕食を黙 々と食べる夫に「おいしい?」と聞かずにはいられなかった。そうすると、「おいしい」とか「普通」とか、思ったことを言ってくれた。
 私は夫の「おいしい」が聞きたくて、毎日食べたいものを聞いた。やはり、食べたい物を食べたい時に食べるのが一番おいしいと感じるだろうと思ったからだ。しかしその作戦も一か月程で失敗した。
 「毎日聞かれると、何か答えなきゃってプレッシャーになる」
 毎日あなたが喜ぶメニューを考える私だって同じなんだけどな…と思ったがぐっと飲みこんだ。
 ある日曜日の朝、普段は朝食を食べない夫が、
 「おなかすいた、トーストが食べたい」
 といった。私は嬉しくなってすぐに支度をした。
 「マーガリンとバターどっちにする?」
 「マーガリン」
 「蜂蜜があるから、ハニートーストにしようか?」
 「…うん」
 料理という程のものではないが、久しぶりのリクエストに私は一人キッチンで浮かれていた。
 「はい、どうぞ!蜂蜜が垂れるから気を付けて食べてね!」
 「え?蜂蜜?」
 夫は私を見た。
 「ハニートーストにする?って聞いたよね?」
 「ううん、って答えた」
 「…ごめん。私それ食べるから…」
 「いいよ、これ食べる」
 やってしまった。浮かれすぎて聞き間違えた。せっかく食べたい物を伝えてくれたのに、それを間違えるなんて。ため息交じりに夫の横に座り、私もハニートーストを食べた。すると、「おかわり」という声が聞こえた。
 「はーい、次は間違わない!」
 そういう私を呼び止めて、夫はこういった。
 「ハニートーストで。おいしかったから。」
 私は笑顔で答え、もう一度ハニートーストを作った。

 

(完)

 

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