渡辺碧水
【同タイトル(五)から続く】
②の代表的越冬参考例には、札幌市のNPO法人「さっぱち(サッポロ・ミツバチ・プロジェクト)」の屋外地面上での越冬方法が挙げられる。
③の代表的越冬参考例には、市立札幌大通高校の「ミツバチプロジェクト」の校舎屋内保管室での越冬方法が挙げられる。
実際の詳しい内容は、それぞれのホームページなどに載せられているので、ここでは省略するが、いずれも、札幌市での屋上養蜂の場合で、越冬の実践経験回数(年数)が多く、試行錯誤の実践研究を重ねながら、工夫を積み上げて成果を上げている。
また、前回挙げた宮地氏の最新の論文もウェブサイトで読むことができ、同氏が網走市で行った地上養蜂例の場合で、越冬試験を地上木造物置内で実施した③→②の例の詳細を知ることができる。
なお、(四)で指摘した「空中脱糞ができないこと」は、意外にも実際には悲観するほどの障害にならないことが判明した。
与えられる越冬用の代用餌の消化も関係していると思われるが、早春の気象の温暖化もあって、越冬終了時期(屋内から屋外へ巣箱を移設する時期)を少し早めることで、死滅を回避できることがわかった。
流氷の接岸する網走市で行った宮地氏らの越冬試験では、三月二十日の屋外移設後に盛んな飛行脱糞が観察されたと報告されている。
蜜蜂の越冬は、冬眠ではなく、蜂球になって羽ばたきで熱を出し温め合いながら寒さを凌ぐのであり、個体数の少ない小蜂球の弱小群では耐えられないと言われている。
別の言い方をすれば、限られた食料を節約しながら生き抜くため、越冬中、女王蜂は産卵をやめ、働き蜂は幼虫と蛹がいない状態で体温を低く保ち、消費エネルギーを少なくして、春を(花が咲くのを)待つとされる。
働き蜂の成虫は、夏季には三十日ほどしか生きられないが、越冬中は省エネしほぼ活動しないことで、五倍の百五十日ほども生き抜く臨機応変の適応力を備えている。驚異の延命技で、寒冷地の越冬も乗り越えて、生命力のすごさをわれわれに見せつける。
美深町での越冬の場合、約二百個の巣箱で約十六万匹が元気に春を迎えたというから、単純計算で一箱平均は八百個体。正に小蜂球の弱小群になっても耐え抜いた訳だ。
常識は、どんどん書き換えられていく。
(完)
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