渡辺碧水
【同タイトル(三)から続く】
再度、初回の新聞報道に戻って読み返してみると、なぜ蜂群の全滅の危険性を伴うような越冬を北海道で試みるのか、その理由が書かれていない。
動画によって得た補充内容で「ハチを運ぶ費用を抑えようと」していることがわかったのだが、これだけがその理由なら、前回述べた、道内の養蜂業者も道内で越冬させない事由と矛盾する。
それに、字数の関係で前回述べなかった理由もまだある。
それは、「蜜蜂はどこで用を足す?(補)」でも述べたように、「道内での蜂群の越冬が困難な理由として、凍死よりも外気温が低いため、二月下旬~三月上旬に通常行われる飛行脱糞が出来ないが故に死滅するものと考えられている」。
外に出て、空中脱糞ができないことが理由なら、蜜蜂の生理的習性上、寒冷地は決定的越冬困難性がある、となる。北海道での越冬はハードルがいっそう高くなる。
いよいよ、別な「ぜひ北海道で越冬を」という理由がなければならないと思われる。
親子三代が現役で養蜂を営むのが珍しい事例ということで、二〇二〇年九月二十二日号の『週刊女性』にも西垂水養蜂園一家の記事が載っていた。
「人間ドキュメント/親子三代現役の転地養蜂一家、五歳から働く三代目『蜂屋の息子』の初めての試練」と題する長編記事で、主に三代目の栄太さんの生き方に焦点を当てたものだった。
この記事には、北海道での蜜蜂の越冬についてはふれられていなかったが、「うまいハチミツを採るために地理的特性を生かした転地養蜂だが、業界を取り巻く状況は厳しい。高齢化や農村部の乱開発による蜜源の減少、輸送コストの高騰。輸送時にSAやフェリーでほかの利用客が蜂に過敏になっている問題もある」とあった。
これらのほかに、地球温暖化の影響と思われる季節の変化も顕著で、北海道の夏季が長期間化しているから、北上の途中で立ち寄りながらの採蜜では、蜜蜂に過重負担を強いることに加えて、良質な花蜜を採る期間の一部を失うことにもなりかねない。
諸条件を加味すると、一定数の蜂群の養蜂は北海道だけに限定し、夏の早期から秋まで採蜜する狭い範囲の転地養蜂に切り替える方が賢明とも考えられる。
結局、遠距離移送も回避できる北海道での越冬に挑戦する方策に向かうことになる。
【同タイトル(五)へ続く】
(完)
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