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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

はちみつで描いた五輪

岩隈大介

 

 一九六四年、街の商店街は十月に開催される東京オリンピックに向け活気に溢れていた。 
 私はその年小学校二年生になっていた。家は小さな電気店を営み、父は毎日商品の配達に、母は毎日店の接客に追われていた。帰宅すると店にいる母に「ただいま」と声をかけ台所へ向かった。いつも何かしらのおやつが台所のテーブルに置かれていて、この日は一枚のトーストと蜂蜜の小瓶が置かれていた。先日「熱々のトーストに蜂蜜をたらして食べると美味しいと聞いた」と母に言って買ってもらったものだ。トースターに差し込んだパンが飛び上がるのを蜂蜜の瓶を左手に右手にはスプーンを持って「ポン」と出来上がったパンにまだ観ぬオリンピックの五輪を蜂蜜で描いた。パンの表面に塗られた蜂蜜の五輪はドロドロから少しパリッとしてくる。自分で作った特製蜂蜜パンは実に美味しかった。そこへ近所の友達が草野球の誘いで訪れた。残りのパンを口に押し込み勝手口に置かれたグローブを手に取り公園へでかけた。手についた蜂蜜がグローブに付き少しベタベタになりその部分の色が変色していたがペロリと舐めかすかな甘みを楽しんだ。蜂蜜パワーのおかげだろうか、ヒット三本も打て気分は上々で家に帰るとテーブルの上に置きっぱなしで来てしまった蜂蜜の瓶が黒くモヤモヤとしているのが目にとまった。なんだろうと顔を近くへ寄せてみると蓋を閉め忘れた蜂蜜の瓶にありの大群が押し寄せて瓶全体が真っ黒になっていた。「うぁー」と大きな声に驚いた母が店から駆けつけ母も「なにやったのよ、蓋をしっかり閉めないからよ」とあきれ顔。その日の夕食時、しょげている私に父が「アリさんも美味しいと思うんだから、蜂蜜は本当に美味しいんだよな」と食卓は笑いに満ちていた。
 それから蜂蜜を食べるときはしっかりと蓋を閉めることを子供心に学んだ。
 十月十日、私は夏休みの工作。蜂蜜の蓋を五つ画用紙に貼り五輪を作ったものを部屋の壁に貼っていた。その日は青空に五輪が描かれると商店街の店主や住民はわくわくとしていた。「そろそろ来る時間だぞ」店に鍵を閉めて家族三人で屋上へと上がる。歩道にいる人たちからの感激の声がこだましてきた。私たち家族もブルーインパレスによって青空に描かれた五輪を見て、空に向かい歓声を上げ微笑んでいた。

 

(完)

 

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