高橋 知也
きっと、冷蔵庫にあるだろう。
北海道北見市に、妻の実家はある。
長い休みが取れたので、二人で帰省したある夏の日のこと。
長旅で疲れくつろいでいる妻の隣で、私は狙っていた。
妻の実家の冷蔵庫には、癖になる甘い汁がある。
妻の実家は、たまねぎ農家だ。
お義父さんが玉ねぎを育てている畑で、
蜂蜜を作っている人がいるらしい。
少しスペースを借りながら、
ミツバチを働かせているそうだ。
その人は土地を貸してくれたお礼にと、
沢山の蜂蜜をくれる。
それだけでも、まあ羨ましい話だ。
ただ、私がソワソワするのは、
その蜂蜜が食べたいからではない。
(もちろん、貰えるならそりゃ食べたいけどね)
私が待ち遠しいのは、妻の祖母が作る「はちみつレモン水」だ!!
お婆ちゃんが作る「はちみつレモン水」の作り方は、すべてが適量。
お婆ちゃんにしか作れない味なのだ。
初めて飲んだ時は、あまりのおいしさに一瞬でコップがカラに。
おかわりは必然なのである!
(しかし、何杯も貰って飲むというのも…となり、
いつも2杯までのおかわりだ。本当はもっと飲みたい!)
そんなこんなで…。
私は学習した動物にように、
帰省の度に冷蔵庫を眺めてしまうという、そんな人間になったのである。
妻は気が利くので、「いる?」と聞いてくれる。
私は「お願いします。」と即答。
冷蔵庫のドアが開けられる。
そして念願の甘い汁を啜るのだ。本当においしい。
このはちみつレモン水のお決まりの流れは、
ここ数年で定着しつつある。
妻がおいしいよね、と語りかける。
「(作り方は)適当なんだよね」と、お婆ちゃんは控えめに笑っていた。
まさにおばあちゃんと、ミツバチと、蜂蜜を作ってくれる人の連携技。
一発KOである。おかわり!感謝しています。
時間が経って、自宅へ帰ろうという時。
お婆ちゃんが持っていきなさいと、蜂蜜をくれた。
文字通りの、抱えるほど大きなビンだ。
これだけの蜂蜜があれば、自分たちの家でも
それなりにおいしいモノが作れるだろう。
でもこの場所で飲む「はちみつレモン水」が、
いつまでも好きなんだろうなと、不意に思う夏なのであった。
(完)
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