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蜂蜜エッセイ応募作品

蜜蜂社会を誤解させる表現

渡辺 碧水

 

 蜂蜜エッセイに取り組み、蜂群について書き進めていて、ともすると誤解を与えかねない表現の説明に陥りがちなことに気づいた。
 例えば、「蜂群(コロニー)は、血縁個体からなる階級社会を形成していて、一匹の女王蜂がリーダーとして統治し、その女王蜂を多数の雌の働き蜂が世話をして、少数の雄蜂が生殖だけを担っている」などというような表現をしてしまう。
 この場合には、用語の「階級」と「女王」に自ら影響されて、つい「リーダーとして統治し」と強調する表現で書いてしまい、誤った説明になっていることに気づかない。
 「女王」という表現が誤解を招きやすい点については、当蜂蜜エッセイ第四回「リーダーなき秩序社会」などで、以前に何度も触れているので、ここでは省略する。
 今回は「階級」に焦点を当てる。
 蜂群の説明に「階級」の表現(用語)が使われるのは、専門的な特殊表現の「カースト」を日本語に置き換える場合である。
 例えば、玉川大学ミツバチ科学研究センターのサイトの「ミツバチノート」には「ミツバチの群(コロニー)には外観の異なる三種類のミツバチがいます。女王蜂、雄蜂、働き蜂で、これをミツバチの『カースト』と呼んでいます」とある。
 大和ミツバチ研究所のサイトには「一匹の女王蜂を中心として雄バチと多くの雌バチ(働き蜂)によって構成されています。役割の違うこの構成をミツバチの『カースト』と呼んでいます」とある。
 この分野の権威者、玉川大学教授の佐々木謙氏は、総説論文の中で「真社会性昆虫のコロニーでは、個体がそれぞれの仕事に特殊化した形態や行動を発現させ、効率的な分業を実現している。このような分業に特殊化した個体をカーストといい、繁殖を行うカーストを女王、それ以外の不妊のカーストをワーカーと呼んでいる」と述べている。
 一方、国語辞典の『デジタル大辞泉』には「①インド社会で歴史的に形成された身分制度。②階級制度。社会的階級、地位。③社会性昆虫に見られる役割の階層」とある。
 多くの一般的な国語辞典では、この中の①②の意味しか挙げられていない。このことから、「カースト」を「階級」と訳されてきたものと推測される。
 誤解を減らし、わかりやすく説明する意味で、蜜蜂の社会は「階級」よりも、「分業」または「役割分担」の言葉で表す方が適切なのではないかと判断される。

 

(完)

 

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