渡辺 碧水
当蜂蜜エッセイの第六回募集で既に「蜜蜂はどこで用を足す?」を投稿した。
本稿は、その後の収集調査で得られた資料の中から、関連する情報を二つ追加して紹介し、前稿を補足するものである。
女王蜂以外の成虫蜂の食べ物はもっぱら花蜜と花粉。花粉中のタンパク質は消化され、アミノ酸が吸収されて体液中に入るのだが、腸内に残った花粉の殻は硬いので、全く消化されないで直腸にそのまま蓄積される。蜜蜂は巣内で脱糞する習性はなく、時々外へ飛び出して蓄積物を「空中(飛行)脱糞」する。
雨が続いた後で晴れると、人が洗濯したくなるように、蜂もその時を待って巣から飛び出し、必ず空中で脱糞する。干した洗濯物の汚れが目立つのはそのような場合である。
北海道立総合研究機構森林研究本部/林業試験場の季刊誌『光珠内季報』(一九七三年七月発行、第十七号)には、次の例が報告されていた。
一九七二年七月、函館市郊外の住宅地に黄色い汚物らしいものが降り、空からの黄害と騒がれた。他にも類例があった。また、電車の沿線の住宅地でも問題になり、電車のトイレから飛散するものと企業に住民が抗議した例もあった。
専門家が検体を顕微鏡で調べたところ、いずれも多量の花粉粒が見出され、蜜蜂の糞であることがわかった。
黄害が蜜蜂の糞である場合の特徴として、次の要件が挙げられる。
① 被害地域は局所的で狭く限られる。
② 時期は植物の開花期(蜜蜂の採蜜時期)だけである。
③ 一日の昼間の一定時間(蜜蜂の採蜜時刻)に集中する。
④ 汚物斑点は五ミリ大前後(〇・五ミリ程度の蜂糞が空中飛沫で拡大する)である。
⑤ 斑点に多量の花粉粒が含まれる。
⑥ 近隣に営巣(養蜂箱)がある。
⑦ 斑点の色や臭いが汚物に似ている。
(報告者の梶勝次氏の記事「空からの黄害とその原因」を基に整理した)
もう一つの注目情報は次の見解である。
「養蜂家による道内での蜂群の越冬が困難な理由として、凍死よりも外気温が低いため、二月下旬~三月上旬に通常本州地域で行われる飛行脱糞が出来ないために死滅するものと考えられている」(宮地竜郎氏による論文「北海道における西洋ミツバチの越冬を伴う定置養蜂技術の開発」HACCPメールマガジン、百三十六号、二〇二〇年一月)
(完)
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