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蜂蜜エッセイ応募作品

蜜蜂集団の驚きの神秘性(四)

渡辺 碧水

 

 【同タイトル(三)から続く】
 第四の驚きは、多様性を求めて行われる繁殖の交尾行動に見られる。
 春の繁殖期になると、各蜂群の中に、一匹の女王蜂と多数の雄蜂が誕生する。
 容易さと効率からは、繁殖は巣内の女王蜂と雄蜂とが交尾すれば簡単に実現するようにも思われるが、やはり自然の摂理が働き、決して近親交配には至らない。
 もし、近親交配が行われた場合には、群内に多様性がなくなり、病気耐性や環境適応能力の低下などの弊害が生じることを、遠い昔から経験則で知っている。
 また、自群の中では利益をもたらさないとの理由で、身勝手に考え、ずる賢く振る舞い、他群のためだけに貢献する雄は産まない、育てないという蜂群も決してない。
 何度も結婚(交尾)飛行に出かけても、交尾が成就せず、巣に戻り、巣内でうろうろして生涯を終える個体がほとんどであることが常であっても、全体の五~十%の割合で雄を産み育てることも律儀に守られる。
 大きな意味があり、働き蜂の個体間の多様性に反映されるからである。
 蜜蜂は他の蜂種と違って、女王蜂の交尾は同時期に他群の複数の雄蜂と行われる。
 交尾に適した天候の下、空中に多数の群の女王蜂と雄蜂が一か所に集まり、膨大な数の個体が違った群の相手を求め、追い、帯をなして舞うように入り乱れる。
 その結果、同世代の働き蜂は父親違いの姉妹ということになり、受け継ぐ遺伝子の違いから個体差が生まれる。温度、匂いなどに対する感度の違いなどの個体差もまた、群れの維持には有効である。
 中村純氏によれば「蜜蜂は住環境にとても気を配る昆虫で、なかでも温度や湿度を保つ換気は、分業になくても重要な仕事になる。少しでも暑くなったとき、率先して空気の入れ替えを始めるのは温度変化に敏感な働き蜂である。起きた問題に対し、働きバチは個体差を生かしてファジーな調節を行っている」のだそうだ。
 また、「基本の流れはありつつも、仕事に柔軟に対応するのも蜜蜂の大きな特徴です。例えば、女王蜂が卵を産んでいない時期ならば、育児の仕事は必要ないとスキップするし、門番がやられたとなれば、他の働き蜂がカバーに入る。仕事と今の自分の生理状態が合っていなければ、待機組に入る」と、実に柔軟である。
 安定した社会を長く維持する鍵は一定の「余裕」にある。蜜蜂に学ぶ点は多い。

 

(完)

 

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