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蜂蜜エッセイ応募作品

蜜蜂集団の驚きの神秘性(三)

渡辺 碧水

 

 【同タイトル(二)から続く】
 第三の驚きは、清掃の経験はあるももの、まだ若く未熟と思われる思春期の働き蜂が女王蜂の世話や産卵介助や子育てに当たること。だが、もっともな理由がある。
 思春期は、人間なら十七~十八歳の乙女の時期、いわゆる若返りホルモンのパロチンが唾液腺から最も多く分泌される。若い働き蜂も、同様に下咽頭腺と大顎腺からパロチンそっくりの成分を含むローヤルゼリーを盛んに分泌する。
 これこそが女王蜂には欠かせない精力源であり、超栄養価の特別食なのである。せっせと分泌されたローヤルゼリーをたっぷり与えられた女王蜂は、盛んに産卵する。
 世話係の若い働き蜂は、産卵のために巣内を動き回る女王蜂に付きっきりで、口移しでローヤルゼリーを食べさせる。同時に女王蜂の体をしきりになめる。ここに仕組まれた神秘的なカラクリがある。
 女王蜂は体の大顎線から女王物質と呼ばれるフェロモンを分泌し、働き蜂になめさせ、匂いを嗅がせ、世話係の彼女らをとおして巣全体の蜂にも行き渡らせる。
 このフェロモンには多くの情報が含まれているが、女王蜂のフェロモンに含まれる成分には、同性の働き蜂が女王にならないように産卵能力を抑制する効果がある。そのため、一匹しか存在できない蜂群の女王蜂が複数産出されて、その地位をめぐって争い、混乱を招くようなことは起こらない。
 若い働き蜂は、世話中に女王蜂から女王物質を嗅がされ、卵巣の発達を抑えられてしまい、卵を産めなくなってしまう。
 つまり、働き蜂は女王蜂に産卵促進剤(ローヤルゼリー)を与える一方で、女王蜂の体から出る経口避妊薬(フェロモン)をなめて、自ら卵巣の働きを完全に抑えている。
 ちなみに、女王蜂が事故や寿命などの原因で死んでしまい、発出されていたフェロモンの影響を受けなくなると、抑制が解けた働き蜂が卵を産むようになる。
 働き蜂は交尾をしていないため、卵はすべて無精卵で、産まれてくるのはすべて雄蜂になる。このままでは、蜂群は消滅する。
 この「階級維持フェロモン」のほかに、女王蜂は、分蜂の時に群飛する働き蜂を一か所に引き集める「集合フェロモン」、新女王が空中で交尾する際に雄を誘引する「性フェロモン」などを放出する。雄と雌を産み分けるときも、フェロモンを利用する。
【同タイトル(四)へ続く】

 

(完)

 

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