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蜂蜜エッセイ応募作品

蜜蜂集団の驚きの神秘性(一)

渡辺 碧水

 

 蜜蜂の一群(コロニー)は、膨大な数の個体が絶えず忙しそうに働く集団に見える。昭和の時代、猛烈に働く会社員の形容詞に「働き蜂」が使われたほどである。
 また、膨大な数の個体が巣の内外で整然と定められた役割を果たす。働き蜂は、頂点に女王蜂が君臨する厳格な階層階級の命令系統の下で、激務をものともせず、黙々と働き続けて短い生涯を閉じる。
 蜜蜂の行動を見て、このように判断する人は、少なくないのではなかろうか。
 ところが、玉川大学ミツバチ科学研究センターの主任教授を長く務めた中村純氏など、蜜蜂研究者の説明を読むと、むしろ意外な神秘性を備えた生命体だと思えてくる。
 第一の驚きは、働き蜂の勤務組の割合は基本的に三割で、残りの七割は待機組だそうだ。待機とは、「何かお手伝いすることありませんか」と飛び回るとか、ぶらぶらしながら非常事に備えているということ。働き蜂の個体の一日は、約六時間が労働、約四時間が睡眠で、残り時間が待機中とか。
 働き者の代表、もう一種の昆虫、蟻の場合も、働き中は同じ三割なのだそうだ。
 みんなが忙しそうにせっせと働いているように見えて、実は三割しか働いていないとは驚きであり、「十分な余裕」の確保が非常に大切なのだと知った。
 この「余裕」の待機組が七割を保持できるかどうかが重要だが、蜂群によって構成数は異なる。構成が「勤務蜂三:待機蜂七」の割合を保てるのは、三万~五万匹の規模。
 これより小規模な群になると、余裕を保てず、成果を十分に挙げられなくなる。巣の環境維持に必ず必要な作業量は変わらないから、小規模ほど待機数が少なくなる。
 そうなると、例えば、突然の外敵の襲来に立ち向かう場合や短時間に咲く花から一斉に採蜜する場合など、「いざ」というときに、余力がないので十分な対応ができない。
 余裕がないと、一時的にはなんとかなっても、いつかどこかで無理が生じ、その無理が蓄積し、いずれ集団は衰退に向かわざるを得ない。
 いざというときのための余裕の確保。これは、種の生命の「持続可能性」の維持につながる。蜂群の規模の増減や分蜂も、そんな法則に基づくのであろう。
 どんな環境の変化にも乗り越えて、大昔から生存し続けてきた蜂群の生命体に学ぶところは大きい。
 【同タイトル(二)へ続く】

 

(完)

 

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