渡辺 碧水
【同タイトル(二)から続く】
働き蜂も雌であり、尾尻の毒針は産卵管が変形してできたもの。巣がこのような状況になると、何とか巣を守らねばという思いから、毒針が産卵管に変化して産卵ができるようになるのだという。驚くべき変化はローヤルゼリーの効果である。
ここでまた、膨大な数の成虫働き蜂の中から、女王蜂代行となる一匹か数匹かがローヤルゼリーを食べ始めるとすれば、やはり何らかの個体差があって、最も子孫の繁栄に寄与すると判断された個体が選ばれるものと推測される。
女王蜂は巣脾の中心から渦を描くように規律正しく産卵していくが、働き蜂産卵はかなりでたらめで、あちこちに産卵するうえに、一つの巣房に複数を産卵したりもする。
でたらめでも卵ができるのならまず安心、と思ったら大間違い。働き蜂は交尾をしていないので、産卵ができても、産まれるのはすべて雄なのである。
蜜蜂の雄は、無精卵から産まれるという、生物学的にみても不思議な存在である。
しかも、この雄蜂は巣の中ではまったく仕事をせず、餌を食い散らかすだけの役立たずなので、巣の崩壊は待ったなしの状況に変わりがない。
養蜂で人間に飼われている場合、この段階で、有精卵を産む女王蜂を他から連れてきて導入したらどうなるか。無王騒ぎの時と同様に、通常の営みに回復するだろうか。
残念ながら、一度、働き蜂産卵が始まってしまうと、他から女王蜂を導入しても、今度は解決しない。
なぜなら、産卵を始めた働き蜂が、自分が女王蜂だと思い込んでいるうえに、周りの働き蜂も彼女を女王蜂扱いして、他から入ってきた女王蜂を一斉に攻撃するからである。
結果として、導入蜂は殺されてしまう。
結局、どの場合も、働き蜂産卵の段階にまで至ってしまうと、蜂群の巣の絶滅は避けられない事態になる。
ここで養蜂家の立場になってみれば、特に、女王蜂の交尾期に無王群の状況になる可能性があるため、女王蜂が交尾飛行から無事に帰ってきて産卵が確認されるまで、油断することなく点検をする必要がある。
万が一、女王蜂がいなくなったら、他群から「有児の巣枠や王台」を移し入れるか、交尾済みまたは未交尾の女王蜂を導入するかして、「働き蜂産卵」を未然に防がなくてはならない。
(完)
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