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蜂蜜エッセイ応募作品

女王蜂がいないと蜂群はどうなる?(二)

渡辺 碧水

 

 【同タイトル(一)から続く】
 もし、不幸にも、女王蜂がいない状況になったとき、あらゆる営みの役割を担っている働き蜂は、どのような行動をとるだろうか。
 女王蜂が見つからない場合、働き蜂は、巣内で孵化後三日以内(正確には六十時間以内)の働き蜂の幼虫を探し出し、その幼虫が入っている巣房を大急ぎで大袋状の王台に改装する。このように働き蜂の巣房を利用して緊急時に造られる王台を「変成王台」という。
 変成王台は、女王蜂が消失後二~三日経ってから複数造られる。
 六十時間以内の限定理由は、その期間の働き蜂の幼虫も、女王蜂候補の場合と同様にローヤルゼリーだけを餌にまだ与えられており、女王蜂になる可能性があるから。
 六十時間を過ぎてしまうと、働き蜂になる幼虫は、餌が蜂蜜や花粉に変わっているので、もはやその資格はない。この六十時間が女王蜂と働き蜂の、与えられる餌の分岐点。
 六十時間以内の幼虫を探し出すとはいっても、一日に二千個もの卵が産まれているのだから、実は選別は容易で、いくらでも候補の幼虫はいるはずである。
 数匹の幼虫が選ばれるのだが、きっと何らかの個体差があって、最も子孫の繁栄に寄与すると判断された個体が選ばれるものと推測される。
 変成王台の幼虫が、無事に羽化して女王蜂になり、婚活結婚飛行に出かけ交尾に成功し巣に帰り、産卵を始めれば通常に復帰するので、女王蜂不在事件も一件落着となる。
 だが、もし万が一、この新女王蜂が交尾飛行中に鳥に食べられるなどして、帰ってこないという不幸がさらに重なったらどうなるか。
 旧女王蜂がいなくなってから、この新女王蜂が産まれるまでに二週間以上経っており、その間の産卵はないので、当然六十時間以内の幼虫もいるわけがない。卵もない、幼虫もいない。このままでは、もはや巣は壊滅の一途をたどるしかない?
 と思うが、このような状況が一~二週間続くと、なんと働き蜂が産卵を始めるという奇妙な現象が起こる。これを「働き蜂産卵」という。
 成虫になっていた働き蜂自身がローヤルゼリーを食べ始める。すると、委縮していた働き蜂の卵巣機能が回復して、産卵ができるようになる。女王蜂がいなくなって、働き蜂の産卵を抑制していた女王蜂発出のフェロモンが消滅していたからである。
 【同タイトル(三)へ続く】

 

(完)

 

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