はちみつ家 > 蜂蜜エッセイ

ミツバチと共に90年――

信州須坂 鈴木養蜂場

はちみつ家

Suzuki Bee Keeping

サイトマップ RSSフィード
〒382-0082 長野県須坂市大字須坂222-3

 

蜂蜜エッセイ応募作品

蜜蜂は泣いたり鳴いたりする?(前)

渡辺 碧水

 

 ノンフィクションライターの上之二郎氏は、二〇〇三年九月に『ミツバチが泣いている』を、二〇〇五年二月に『続ミツバチが泣いている』を単行本で出版した。
 また、実業家で学者の山口喜久二氏は、月刊誌『産学官連携ジャーナル』の二〇一六年十二月号で「ミツバチは泣いている」と題した巻頭言を、蜂蜜マイスター(蜜匠)の水谷俊介氏も、二〇二〇年六月のブログで「ミツバチが泣いている」と書いている。
 だが、この「泣いている」と書かれているのを、本当に蜜蜂が涙を流して泣くとは、高学年の小学生なら思わないだろう。
 昆虫の体は人間とは構造が違うことを知っているし、また、蜜蜂の立場になったら、きっと嘆き悲しみ泣くだろうと、心情的に捉えた表現になっていることにも理解が及ぶ。
 自分の巣から大切な蜜を持ち出した人間が、その蜜を大切に扱わなかったり、そのよさを生かしていなかったりする実情を知ったら、蜜蜂はどんな思いをするだろうか、きっと泣くに違いない、との思いで付けられた題名だとたいていの人は想像するだろう。
 持って回った言い方になったが、蜜蜂は体の構造上泣くことはできない。
 一方、鳴くほうはどうだろう。「蜜蜂は鳴く」と思う人は大人でも多いに違いない。
 前述の水谷氏は、講演会で「ミツバチって鳴きますか?」という可愛らしい質問を子供から受けることがあるそうだ。
 これに対して「ミツバチは鳴きません」と答えると、何とも冷たい回答になってしまうので、少し話を膨らませて「実は女王蜂だけ鳴くことがあるんですよ!」と、女王蜂羽化直後の、声を出して鳴いているかのように聞こえる、翅の強い擦り合わせによって出る音について説明するという。
 一定の長さのこの高音を「クイーンパイピング」(女王蜂の鳴き声)と呼ぶ。これには、羽化してすぐにライバルを探し回っている既誕生女王蜂が発する音「トゥーティング」と、王台の中にいてそれに対抗して発する未誕生女王蜂の音「クワッキング」とがある。どちらの名称も翅の共鳴音の印象から名づけられた。
 いずれも自身の存在を誇示する合図であるが、結局、クワッキングで存在を知らせた未誕生女王蜂は、既誕生女王蜂や働き蜂によって王台を壊され、殺されてしまう不運の泣き声とも言えよう。
 【同タイトル(後)へ続く】

 

(完)

 

蜂蜜エッセイ一覧 =>

 

蜂蜜エッセイ

応募要項 =>

 

ニホンミツバチの蜂蜜

はちみつ家メニュー

鈴木養蜂場 はちみつ家/通販・販売サイト

Copyright (C) 2011-2024 Suzuki Bee Keeping All Rights Reserved.