渡辺 碧水
散歩の途中で尿意をもよおし、帰宅を急いだことがあった。その時、ふと思ったのだが、蜜蜂は用を足すとき、つまり糞尿を排泄するとき、どこで済ますのだろうか、と。
他の昆虫などと同様に、飛行中の空でも、止まった花でも、巣の中でも、もよおしたその場所で排泄するだろうと想像した。
そうだとすると、狭い空間に個体がひしめき合う巣の中では、貯め込んでいく蜜の中に自身の排泄物が混ざることも起こり得るはずだ。
きれいな色の蜂蜜を人間は食べているのだが、排泄物が中に溶け込んでいるのか、他の場所で足し混ざることがないのか、などと疑念が膨らむ。
そこで、「実際は?」と調べてみると、安心できることがわかった。蜜蜂はきれい好きなので、貯蜜のそばで用を足すようなことは決してなく、原則、巣の外に出ていって排泄するのだそうだ。
うまく備わっているようで、蜜蜂の成体は、排泄物を巣外に排泄するまで腸菅内に蓄える構造に発達しており、生来、巣外でする習性を備えている。
巣内、特に、蜜を貯蔵する上層部の巣房付近は清潔が保たれるように、役割を分担する内勤蜂の清掃係が張り付いていて、発生するゴミ類の掃除は行き届いている。
ひと安心したところで、従事する仕事や生理状態の違いから、摂取する餌が異なることにも注目してみよう。
後先になるが、分業の最終段階、花蜜を集める外勤蜂は、体は完成しており、蜂児や女王蜂への給餌作業も行わない。そのため、タンパク源を摂取する必要性がなく、エネルギー源である糖蜜だけを摂取する。排泄の機会は、巣外でいくらでもある。
一方、内勤蜂は巣内で働く。体は未発達なので、花粉を摂取することでタンパク源を補給し、体を生理的に完成させる必要がある。また、巣内の蜂児や女王蜂の餌となるローヤルゼリーなどを体内で生産するためにも、花粉を摂取する必要がある。
内勤蜂は、排泄のために巣の外に出なければならなく、近場で用を足すことになる。また、明るい色や光る物やの所にする習性があり、巣の近くに白い壁や白い乗用車などがあると、そこでする。黄色い糞跡は、蜜蜂が巣外で用を足す証拠であり、排泄の当事者である証拠となる。
なお、消化吸収の完全なローヤルゼリーだけを食べている女王蜂は排泄をしない。その証拠に、交尾時と分蜂時しか巣外に出ないし、体の消化器官は退化しているそうだ。
(完)
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