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蜂蜜エッセイ応募作品

蜜蜂に余生はない

渡辺 碧水

 

 蜜蜂一群の巣(コロニー)の構成は、通常、一匹の雌の女王蜂、数千~数万匹の雌の働き蜂、および数百~数千匹の雄蜂の三種類からなる。
 「女王蜂」の候補は何匹も産まれるが、一匹を残して、他は即時に殺される運命。
 女王蜂の役割は産卵で、羽化後約一週間で、他群の雄との交尾に出かけ、交尾飛行から戻ると、夏季の期間は毎日、卵を二千個も三千個も産む。巣房の大きさに合わせて、働き蜂と雄蜂を産み分ける。寿命は三~四年程度、長くて五年ほど。
 次年の春になると、誕生する新女王蜂に巣を明け渡すため、その直前、旧女王蜂は半数ほどの働き蜂を引き連れて分蜂(新しい営巣場所へ移動する巣別れ)する。
 産卵効率が落ちてくると、働き蜂から欠格の引導を渡され、群れから追放される。
 「働き蜂」は、成熟につれて役割分担を変えつつ、生殖以外のあらゆる仕事を受け持つ。危険で大変な労働や役割は余命が少ない働き蜂が引き受ける仕組みになっている。
 一気に成長し、役割を変えながらひたすら労働し、一気に衰弱する。寿命は短く、夏季では約一か月だが、越冬期には、蜂球(集まり翅を震わせて熱を出す行動)状態で過ごす時期は約三~五か月に延びる。
 「雄蜂」は春の繁殖期(日本では四~六月)だけに生まれ、役割は交尾。巣内では一切の仕事をせず、性的に成熟すると、一時期毎日、定刻になると交尾飛行に出かける。交尾に成功した個体は、同時に腹部から引きちぎられて死ぬ運命にある。
 交尾不成功の個体は巣に戻り、ぶらぶらして過ごす。しかし、秋になり、食料の集量が減りはじめると、働き蜂から食べ物をもらえなくなり、巣の外に追い出される。巣門近くで哀れな姿で飢え死にする。
 春から夏の採蜜繁忙期、後半期の働き蜂は一生懸命働き続け、力尽きて死ぬ。女王蜂はそれを補うように懸命に卵を産む。常に新旧交代が行われ、群れの生命が維持される。
 事故や感染病などで短命で終わることがあっても、寿命(生まれてから死ぬまでの時間)が狭く決まっていて、個体差や例外はほとんどないことを意味する。
 それは自然の摂理。つまり、蜜蜂として生を得た場合の生態系の法則であり、冷酷に見えるが、当たり前の現象なのである。
 以上のように、蜜蜂の生涯には老後も長寿もない。だから、人間にみられるような余生(活動期を終え、残りの生涯を働かないでのんびりと過ごす時期)はない。

 

(完)

 

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