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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂蜜を乳児に与えてはならない(三)

渡辺 碧水

 

 【同タイトル(二)から続く】
 蜂蜜の場合、蜜蜂はこの汚染された芽胞の付着した花粉を運ぶので、まず蜜蜂の体内が汚染され、結果として蜂蜜が同菌に汚染されることになるといわれている。
 蜂蜜には抗菌力があるので、ボツリヌス菌は悪さを仕掛けることができない。芽胞という状態で、いわば寝たふりをして潜んでいるしかない。
 蜂蜜を検体とした調査をいくつか例示すると、同菌の検出率が約五%という結果があった(三田村弘「食品及び環境のボツリヌス菌汚染」『衛生微生物技術協議会第八回研究会講演抄録』一九八七年。阪口玄二ほか「はちみつとボツリヌス症」『食品と微生物』五巻、一九八八年)。
 一方、〇%という結果もある(森田加奈ほか「はちみつの細菌学的調査(平成十八年度~平成二十九年度)」『東京都健康安全研究センター研究年報』六十九巻、二〇一八年)。
 検出結果は試料原液や試験方法によっても異なり、一般的には約五%とされる。
 乳児ボツリヌス症の発症の仕組みと経過については、次のように説明されている。
 一歳未満の乳児では、腸内細菌の種類が大人と違い、消化吸収の機能も未発達である。消化管が短いことから、成人では上部の消化管で毒性を失わせられるボツリヌス菌も、乳児では下部の腸管まで届いてしまい、そこで定着と増殖を起こしやすくなる。
 すべてではないが、芽胞で汚染された食品を乳児が食べると、菌にとっては活動しやすい環境におかれるので、酸素の少ない状態の腸管内で発芽、増殖して、極めて強い毒素を産生して「乳児ボツリヌス症」を発症する。
 主な症状としては、便秘が数日間続き、全身の筋力低下、脱力状態、吸乳力の低下、泣き声が小さくなる。特に、顔面は無表情となり、頸部筋肉の弛緩により頭部を支えられなくなるといった症状を引き起こす。ほとんどの場合、適切な治療により治癒するが、重症化すると呼吸困難や死亡に至ることもある。
 二〇一七年三月には、東京都で生後五か月の男児が「離乳食として与えられた蜂蜜(推定)」を原因とする食中毒で死亡した。患児の便と家庭で保管中の蜂蜜とからボツリヌス菌が検出。発症の一か月前から蜂蜜入りジュースを飲んでいた。一九八六年以降の記録で、「乳児ボツリヌス症」による死亡例は国内で初めてだった。
 【同タイトル(四)へ続く】

 

(完)

 

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