渡辺 碧水
【同タイトル(一)から続く】
乳児ボツリヌス症は、世界的に一九七六年から注目されるようになったが、以前に発症例がなかったのではなく、その存在を明確に発見できていなかったためである。
今日、日本においては、ボツリヌス菌による食中毒は、食品衛生法第十二条の規定による届け出が義務づけられている。
乳児ボツリヌス症の発症は、蜂蜜摂取以外の原因や原因不明を含めて、実際には年〇~二例で、一九八六年以降三十数年間の合計でも、四十例ほどしか報告されていない。
月齢では、ほとんどの症例が生後三週目~六か月未満で発症している。また、生後二週目までの乳児の感染報告例も少ない。母乳(初乳)に含まれる成分が菌の定着・増殖を抑制していると思われる。
授乳中の母親が蜂蜜を食べたことによる同症の発症例も報告されていない。
推定潜伏期間は三~三十日。回復後の予後は良好で、死亡率は一%未満。
同症の発症は蜂蜜だけが原因ではない。他の食べ物からの発症例には、自家製野菜スープが原因と推定された事例や、井戸水が感染源と推定された事例も報告されている。他にベビーフードなども可能性がある。
同症の原因食品では、やはり蜂蜜が最も多い。約二十五%は蜂蜜が原因とされる。
同菌は、土や川など自然界に広く存在する土壌細菌で、比較的簡単に見つけることができるそうだ。通常、同菌は土壌や湖泥の泥砂中で育つ。
同菌が存在する土壌に生える植物はボツリヌス芽胞で汚染される。だから、土で作る農作物も例外ではない。危険といえば、すべてあぶないのである。
生物学的又は化学的性状の違いによって、同菌は国内の土壌等から検出されるものと海外の土壌から検出さるものとがあり、原因の特定では菌の出身を検査分析する。
酸素が苦手な同菌は、自分を守るために殻を作り「芽胞(耐久性の高い特殊な細胞構造)」という形態で存在し、低酸素状態になると発芽して強い毒を出す。
芽胞は加熱・乾燥に抵抗性が強く、百二十℃で四分間加熱すれば死滅するとされるが、家庭の調理では普通、そこまでしない。
要は、同菌の芽胞を食べないことでしか、発症の予防はできないと考えるのがよい。
【同タイトル(三)へ続く】
(完)
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