渡辺 碧水
【同タイトル(三)から続く】
リコピンは水に溶けないので、これを第三のみつに含ませるのが難しい。このところを課題として、今、生徒たちは懸命に取り組んでいる。
次は、現在の状況を生徒自身が語る。
新しい第三のみつの開発の「かなめ」となるのは、機能性成分を含んだ餌を食べさせること。今年の開発は、昨年(二〇一九年度)に引き続き、トマトを蜜源として、リコピンやギャバなどの成分を含んだ蜜造りに挑戦している。
「リコピン」はトマトに含まれる赤い色素。体内の過剰な活性酸素を消去する抗酸化物質。美容効果や生活習慣病の予防効果があるとされる。
「ギャバ」はアミノ酸の一種。緊張やストレスを和らげて、脳の興奮を鎮める働きがあり、睡眠の質を高め、血圧を下げる機能もあるとされる。
生徒たちは餌造りに工夫を重ねる。
トマトを搾ってジュース状にすると、水分と固形部分に分離してしまい、トマト全部を蜂に食べてもらえない。リボピンは固形部分にしか含まれていないので、どのようにして蜂に固形部分を食べさせるかがポイント。
昨年まではトマトをつぶして、砂糖を加えたものを与えていたが、なかなか思うように食べてもらえなかった。
今年は、分離することを生かし、固形部分に砂糖を入れて糖度八十%にしたものと、液体部分に砂糖を入れて糖度五十%にしたものを造り、これらを後で一緒にかき混ぜて餌として蜂に与えてみた。(トマトと砂糖の対比分量や加熱処理の有無は不明)
昨年できた蜜では、スプーン一杯分の蜜のリコピンやギャバがトマト一個分の含有量に及ばなかったので、今年は、トマト一個分かそれ以上の成分量を目指した。
ここで、生徒たちの工夫の成果を示す証しとして、二個の瓶詰めの蜜が比較のために並べられた。一個は昨年(二〇一九年)に採蜜されたもの、もう一個は今年(二〇二〇年)に採蜜されたもの。
比較のポイントは蜜の色。後者の瓶の蜜の色のほうが、赤みは明らかに濃いことがわかる。リコピンは赤色の色素をもっているので、今年採蜜のほうが、昨年採蜜のものよりもリコピンの含有量が多いと、見た目では判断されるが、そう期待されるのだそうだ。
まだ最終的な計量的分析結果が出ていない段階なのか、今年の成分量が多かったとも、リコピンの含有量が多かったとも、生徒の口からは語られなかった。
【同タイトル(五)へ続く】
(完)
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