吉沢 貴寛
私はハチミツが好きなのか?
彼女との付き合いは長いが、そんな感情を抱いたことはないはずである。
なぜかはわからないけど一緒にいたい。
好きという感情を、私なりに説明するとこうなる。
その感情とは、いつでも無意識に湧き上がっているものであり、気づきにくいものだ。
私にとって、ハチミツもその感情の対象であることは間違いない。
ただ好きかどうかはわからない。
性格は悪くない。
何かにかけてもよし、料理に混ぜてもよし。地域によっては肌に塗ったり、歯磨き粉にしたりするらしい。
ありとあらゆる方面で、世界中で愛される人当たりの良さは、誰もが認める長所である。
うん。性格は悪くない。
そういえば思い返すと、彼女からアプローチは受けていたかもしれない。
寝ぼけ眼をこすりながら朝食のパンにのせるのは、大半がハチミツだし、
寝付けない夜はホットミルクに混ぜたりなんかしたりすることあるし、
いつも行く喫茶店ではハニーカフェオレばかりを頼んでいる。
彼女は一貫して激しい主張はしないものの、いつも控えめに傍にいて、気づかないくらい心地よく、こっそり私好みの味を演出してくれていた。
ふむ。確かに小さいころから一緒だったし、私生活の随所でアプローチを受けている(気がする)。しかもそれが特に嫌だと思ったことはない。
私は彼女が好きなのか。
一緒にいる時間が長すぎて、一緒にいることに慣れすぎて、その感情に気づけなかっただけなのか。
だとしたらアプローチまでしてきてくれている彼女に、失礼ではないだろうか。
はっきりすべきである。
ただ、こういうのは直ちに答えが出るものでもない。
大好物のべっこう飴でも舐めながら、ゆっくり考えてみよう。
彼女と蜜月の関係になる未来も案外悪くない。かもしれない。
(完)
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