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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

幸せの恵み

こいけのかおる

 

 我が家の庭にはブルーベリーが実る。20年前に亡き父が孫のために植えたもので、子供の成長とともに大きな実に育った。夏になると、じいじの思い出話をしながら家族みんなで摘む。同じ話を飽きもせずに、毎年くり返しては笑い、懐かしむのだった。ブルーベリーにはやさしい甘さのアカシアが合う。そっと丁寧に煮ていると「今年の出来はどうだ」と父の声が聞こえるようで寂しくなる。すると「今年の出来はどうだ」と夫の声。私の気持ちを察して声をかけてくれたのだった。今度は「ああ、いい匂い」「アカシアでしょ」と息子の声。出来たてを嬉しそうに食べながら「ブルーベリーには絶対アカシアだね」と得意げに言う。亡き父の想いが、自然の恵みと溶け合う幸せなひと時だ。
 夏が終わると、庭の柚子の木がピンポン玉ほどの実を付ける。夫と数えては、蜂蜜とガラス瓶を用意して冬の到来を待つ。収穫した柚子は洗って水気を拭いて種を取り、皮の白いワタを透けるくらいに削いで細かく刻む。その皮と実を交互に重ねて蜂蜜を注ぐと、美しいスイーツのようだ。レンゲや百花蜜は琥珀色に、アカシアはやわらかな黄色に輝く。夫のお気に入りは熱 々の甘い柚子ネード。大きなカップにレンゲを足して「あったまるなぁ」と嬉しそう。そして「よし、元気になったぞ」と張り切って仕事に向かうのが日課だ。蜂蜜は我が家の常備品。私はスーパーではなくデパートで買い求める。家族には安全で美味しいものを食べてもらいたいし、夫への日頃の感謝もあって少し贅沢をしている。
 息子たちが幼い頃、庭で飛び交う蜂を見ると「ハチさん、ごくろうさん」と声をかけていた。自然の恵みを感じながら育ってくれて有り難く思う。そろそろ、一人暮らしの長男に蜂蜜を送ろう。「元気でいてね」と手紙を添えて。

 

(完)

 

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