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はちみつに大根

佐藤ゆみ

 

 私にとってのはちみつは、いつも大根の味がした。大根を切ってはちみつで漬け込んだいわゆる「大根はちみつ」という飲み物だ。皮膚の炎症を抑え、のどの調子を整える効果がある。
 私は幼少期から、アトピー性皮膚炎に悩まされていた。掻きむしったら金田一耕助の頭髪のようにカサブタがボロボロ落ちるし、体にカサブタや切り傷がついていることや、布団に血痕が付着しているのは当たり前。一番ひどいときは皮膚がズル剥けて異臭とともに体液(滲出液)が流れ出るので、寝るときは包帯を巻かなければならない。しかも包帯をはがすときは肌に乾いた体液が袖に貼りつくのでとても痛い。今でもコンプレックスだ。
 うちの母は「薬なんか飲ませたら副作用が生じるからかえって体に悪い」と決めつけていたので、治療の際は薬ではなく、オーガニックな食材や漢方薬を与えた。初めて大根はちみつを与えられた小学校低学年の頃、はちみつを飲んでいるのに口に広がる大根の味のミスマッチに対して、嘔吐しそうになった。かつて小学生だった人は、好き嫌いをなくすため、嫌いなものでも何でも食べなければならない…という相反した想いで、給食や夕食に向き合ったことだろう。
 私は「一人ぼっちでも飲める」と母に嘘をついて、当初は飲み物をティッシュに浸して、コップが空になるまで、液体を浸したティッシュをこっそり捨てていた。しかし、そんな嘘をついても、いつかはアトピーを克服しなければならない。鼻をつまんだまま飲んだら、なんとか飲み干すことに成功した。おまけにお口直しとして甘いお菓子やお茶も用意する。これで母に後ろめたい気分にならないで済む。おかげで今でも、普通にはちみつを舐めていても、本当は大根の味がするのではないか、という気にさせられる。
 これから二月~五月末にかけて、アトピー患者が一番苦手な季節がやってくる。花粉やPM2 ・5が飛来するため、かゆみがひどくなるからだ。大根はちみつを毎日作ってもらわなければ。

 

(完)

 

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