ゆかてふ
私はハチミツが好きだ。
高校生の時なんとなくそう思っていた。正直いうと、ちゃんとしたハチミツというのは食べたことがなかったけどそれでも好きな気がしていた。
私は高校生の時、部活のために家から離れた県外の学生寮に住んでいた。寮生というのは自由なんてものが驚くほどまったくないのだ。それに部活もやっていたためバイトなんて出来なくてお金もまったくもっていない。親から時たまに送られてくるダンボールいっぱいのお菓子だけが生きがいだった。
だからとてもじゃないけど100%ハチミツというのは少しお高くて、私には手が届かない存在だった。親もそんなものを送るほどオシャレではない。
いつか食べてみたいなぁ。そんな思いだけを抱えて日 々を過ごしていた。
そんなある日、私に奇跡的なチャンスが舞い降りた。高校の文化祭のバザーで100%純正ハチミツを見つけてしまったのだ。それも超大柄瓶で。
しかしその商品はお金を出せば買えるものではなかった。ゲームの商品なのである。それもいろんな商品名が書いてあるルーレットにダーツを当てるというお昼のテレビでよくみるアレだ。一回三百円で一等は五万円の商品券で下は駄菓子。ハチミツは三等くらい。
だけど神様は優しい。私の日 々悶 々とした気持ちを見透かしていたのだろう。一回目でハチミツの的に私のダーツを運んでくれた。
こんなにうれしい気持ちはいつぶりだろうか。いや今世紀一うれしいかもしれない。
女子高生っぽく大はしゃぎしてハチミツを寮に持ち帰った。
寮というのはうじゃうじゃ人がいるのである。ミツバチのようにたくさんの人がハチミツくれくれと寄ってくる。しかしなんといったって超大柄瓶。心置きなくみんなでハチミツを食べた。初めての純正ハチミツは ・ ・ ・やばい。興奮している高校生の語彙力なんてそんなものだ。
私はやっぱりハチミツが好きなんだ。しっかりそう思えた青春の一ページ。
(完)
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