松本俊彦
甘いものが好きだ。好きだが、菓子を自分で買うことはない。チョコレートでもキャラメルでも、子供の頃の遠足の前日ぐらいしか買った記憶がない。だから、甘いものが好きだと言いながら、何をいつ食べるかは妻次第である。妻が買ってきたものを食べる。私からリクエストすることはない。
しかし、最近それ以外に甘いものを食べる機会が増えた。娘である。二十六歳の娘が、趣味でスイーツを作るようになったのだ。これも、私からリクエストすることはない。娘が、自分が食べたくて作ったもののご相伴にあずかるのだ。だから、これもいつ何が食べられるかわからない。娘の作るスイーツはどれもおいしいのだが、その中でもひときわおいしく、娘自身も気に入っているのがスイートポテトである。スイートポテトを甘くしているのは、もちろん素材のさつまいもとはちみつである。会社から帰宅すると、作ってあることがある。仕事で疲れて、しかも小腹がすいているときのスイートポテトは格別である。しかも、予告されていないから喜びは倍増する。やったと思う。
しかし、これまでずっと家にいた娘が、昨年からレストランでアルバイトをするようになった。もちろんそれはいいのだが、やはりスイートポテトを作ってくれる回数は激減した。忙しいのだから仕方がない。そう、仕方がないのだ。台所に行くとさつまいももあるしはちみつもあるのだが、それが一向に減らなくなった。もともとこちらからリクエストしていなかったのだから、今さらリクエストするのもおかしい。まあ、諦めるしかないかと思っている。しかし、もちろんスイートポテトを自分で買う気には、絶対にならない。
(完)
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