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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

小さいおばあちゃんの喉薬

青猫

 

 僕がまだ小学校低学年だったころ、家では祖父の姉が一緒に暮らしていて、僕達兄妹は「小さいおばあちゃん」と呼んでいた。祖母よりも少し小柄な体格で背中が曲がっていて、僕達からは他の大人たちよりも少しだけ小さく見えたからだ。その頃僕は喘息のため学校を休むことが多かったが、両親は教師をしていて忙しかったため、小さいおばあちゃんが看病をしてくれた。特に息苦しくてなかなか眠れない夜は、小さいおばあちゃんが蜂蜜をお湯で溶かして持ってきてくれた。「これ飲んで横になったらええ、きっと眠れるようになるきの」そう言って、よしよしと、背中をさすってくれた。うちは家族皆、病院嫌いだったため、薬とは無縁の生活だった。だから僕にとっては蜂蜜が薬の代わりだった。実際のところ蜂蜜を飲んだからってすぐに息苦しさが改善することはなかったが、それでも少しだけ喉の痛みが楽になったような気がしていた。「毎日飲んだらええ、そしたらすこうしずつようなるきの」僕はその言葉を信じて、蜂蜜を飲み続けた。
 小さいおばあちゃんは、僕が高校生の頃、脳梗塞であっさりと亡くなった。その日は特に寒かったから、亡くなる直前に入ったお風呂が良くなかったのかもしれない。でもほとんど苦しまずに逝ったから、良かったかなとも思っている。僕の方は高校を卒業して大学に通うために県外へ引っ越すと、不思議と喘息はぴたりと治まり、それから20年経つが一度も再発したことは無い。小学生から高校生まで10年間くらい苦しめられたのが嘘のようだ。そのため蜂蜜を飲むことはかなり減ってしまったが、それでも喉が痛い時や風邪をひきそうな時は蜂蜜を飲むようにしている。「だいじょうぶちゃ、これ飲んだら、もう治るきの」その時だけ小さいおばあちゃんの声が脳内で再生される。

 

(完)

 

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