渡辺 碧水
当「蜂蜜エッセイ」の第五回、二〇二一年一月下旬掲載分の中に、世界中で蜜蜂が減少している現象を憂う作品(松隈杏樹さんの「ミツバチと地球の関係性」)があった。
ネオニコチノイド系農薬の使用が問題視され、松隈さんは、EU(欧州連合)や米国では使用禁止なのに、日本ではまだ禁止されていないことを嘆いている。
まずは、少し復習をしてみる。
ネオニコチノイド系農薬は、一九九〇年代半ばに普及した、ニコチンに似た化学構造を持つ合成農薬で、虫類の中枢神経系を攻撃するとされる。
それまで用いられてきた殺虫剤より害が少ないとされ、現在では、果樹や甜菜類など、花を咲かせる各種農産物の栽培に広く使用されている。
近年、蜜蜂が一斉に姿を消す「蜂群崩壊症候群」と呼ばれる謎めいた現象が世界で報告されるようになった。ダニ、ウイルス、カビと並び、殺虫剤が原因の一つとして挙げられ、これらの相乗作用の影響も指摘されている。
科学的研究は、ネオニコチノイドが蜂の生殖能力や花蜜を探し集める能力に悪影響を及ぼしていることを確認している。
同農薬をあびた蜜蜂は、精子の質が低下したり、記憶と位置把握機能に混乱をきたしたり、病気への耐性が落ちたりすることが調査研究で報告されている。
また、人のニコチン依存症のように、同農薬には蜂に対する中毒作用があるとの結果もあり、実験では、蜂は殺虫剤を含まない餌よりも、殺虫剤を混ぜた餌のほうを好んで摂取する傾向がみられたという。
パリ発のAFP通信は、二〇一八年九月、農業大国フランスで同月一日から、蜜蜂の個体数激減の一因と指摘されるネオニコチノイド系農薬五種の作物への使用を禁止する法律が施行され、屋外農地でも温室でも使用が禁じられる、と伝えた。
同系農薬五種は、これまで欧州で使用を認められており、既にEUが農地での使用を禁止する採択を行っていたが、フランスはさらに一歩踏み込んだ措置を取り、蜜蜂大量死の一因とみられる農薬の使用反対運動の先陣に立ったのである。
同系農薬の禁止には、世界的に賛否両論がある。日本での動向はどうだろう。
【同タイトル(二)へ続く】
(完)
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