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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

叔父とプロポリス

木下さか江

 

 母の実弟だつた叔父は数年前90歳の天寿を全うした。健康に人一倍配慮したのは、若い時分に当時多くの人命を奪った結核に冒され、肉親を失ったからだろう。酒豪で愛煙家でもあった為叔父が還暦間近な頃、私が不安を口にすると、「お前をこれを飲むといい」と差し出した小瓶ーー。プロポリスだった。今から30余年前にはあまり認知されていなかったと思う。数 々の健康食品を手にした叔父がようやくたどり着いたのが、古くから天然の抗生物質として知られた『蜂やに』私は子供の頃蜜蜂ではなかったが何度か刺されたので、熱心な叔父の薦めを聞き流した。叔父は永く愛飲して最晩年迄酒も煙草も存分に堪能して逝った。授かった長命に違いないだろうが、私はプロポリスの効き目を目の当たりにした事があった。かつて中国大陸に従軍した叔父は、戦闘で重油を浴び、命に関わる大火傷を右半身に負った。背面から胸にかけ傷跡は広範囲にケロイド状にひきつり、それを見た十代だった私は恐ろしくて思わず目を背けた経験があった。それは米寿を迎えたある日、風呂上がりの叔父に愕然とした。あれほどの傷跡が見当たらない!きれいに火傷のケロイドが消え失せているではないか……。そういえば、プロポリスは傷を治し、炎症をやわらげる力が。まさかと驚いている私に叔父はにんまりと笑った。「永く続けてみるもんだ」言葉を返す代わりに、頷きながら私も、いつかはきっとと素直に思えた。横浜郊外の我が家の近くに小さな丘があった。もう60年も前の事だ。今は宅地に変わってしまったが、時 々通りかかると幼い私が友達とれんげの花で髪飾りを作って遊ぶ光景が彷彿とする。暖かな陽光の中懸命に蜜を集め飛ぶ、小さな働き蜂の群れ。彼らは私達を決して刺さなかった。あのキラキラした働きものの羽音が懐かしいい。

 

(完)

 

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