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ミツバチと共に90年――

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ミツバチの思い出

山田常雄

 

 普通の家にテレビが入る前だったと思う。
 子供たちの遊びは四季を通じて外が多かった。
 で、甘いおやつというものは貴重品で、お祭りとか正月に貰う小遣いで駄菓子を買うのが楽しみだった。あとはその時のあんころ餅やおはぎの甘さの記憶と、普段の生活では家周りの果樹~スモモや柿だったり西瓜の甘さの思い出くらいしかない。
 それに北国というのにサトウキビがあった。思えばあれは何だったのだろう。単におやつのためにだけ、育てられていたのだろうか?硬い竹のような皮を噛んで剥いて、中の繊維の甘い汁を噛みしめるのだった。時には唇を切ったりして、血が滲むこともあった。
 痛かったろうに。
 
 ここでミツバチの思い出になる。
 確か右の人差し指のてっぺんを刺されたのを。
 もう古希になったというのに。
 
 隣家の納屋の茅葺(かやぶき)屋根の前だった。
 村のあちこちに花 々は無数に咲いていて、ミツバチには天国の時代だったろう。茅葺屋根は平屋で、子供でも軒に手が届いたのだと思う。あるいは踏み台か何かの上にのっかったかも知れない。
 切り揃えられた細い萱(かや)の断面が見えて、土で詰まったのを探すのだった。それはミツバチの巣で、蜜が入っている証拠で、その萱を抜き出し、慎重に萱を裂いて、きれいに並んだ蜜を~乾いて黄色っぽっく固まったもの~を取り出して食べた。甘いだけではない味もして美味だった。
 
 萱の直径は5ミリ弱で、節があったから長さは10センチくらいだったと思う。その中に鉛筆の消しゴムより小さい蜜がずらっと並んでいて、それをつまみ出すのに慌ててしまい、人差し指のてっぺんが、萱の中で作業しているミツバチに触れてしまったのだろう。
 チクリの後にズキズキと痛んだ。
 ミツバチには災難だったろうけれど、刺された方も涙まじり。
 痛さと甘さが合わさった複雑な?思い出である。

 

(完)

 

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