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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

(無題)

春の雪

 

 私は長野県出身である。長野県出身だと言うだけで、これまでの人生で何度も「蜂の子食べるでしょ?」と聞かれてきた。確かに、お弁当のおかずに蜂の佃煮が入っている同級生もいたが、母親も祖父母も関西出身だった我が家では、一度も蜂の佃煮が食卓に上ったことはない。私の地元では、キノコ狩り遠足というものがあり、秋になると山に入ってキノコを採り鍋で煮込み食すという行事があった。私が小学五年生の時、スズメバチに襲われ同級生が刺されるという事故が起きた。
 この様に、正直なところ蜂の思い出はあまり良いものがなかったが、環境問題の解決を専門とする仕事に就いてから生物多様性に関する専門性を深めなければいけないことが多くなり、その中でハチが私たち人間にもたらす大きな恵み(生態系サービス)を知る様になった。そして、ミツバチの素晴らしさと可愛らしさに完全に心を奪われたと同時に、現状の悲惨さに心を傷めた。ニホンミツバチは、日本人の様に仲間と協力する。例えば、外敵から身を護る際には蜂球を作り高温で蒸し殺すのだが、その際に中心部にいるハチは自分の身を呈して死んでいく。また、ミツバチ共通の特性として、一撃必殺の毒針は一度刺すと自分も死んでしまう決死の技である。そして何より、ニホンミツバチの最大の特徴は、多くの花から花粉を集めるため芳醇で豊かな風味のハチミツを作ることである。どこか日本人の気質や日本料理に通じるものがある様な気がしてならない。
 現在は、ネオニコチノイド系農薬や気候変動による猛暑日の増加などで、その数を減らしつつあるのがとても残念だが、果物や野菜の受粉に大いに役立ち、その経済価値は4700億円にも上ると言われている。バニラを受粉させているのも、ハリナシミツバチというミツバチの一種だ。刺激しなければ刺してくることもなく、フカフカの毛に覆われたとても可愛い頑張り屋さんである。そのミツバチが小さい体で一生懸命運び、作ったハチミツはとびきり美味しく、その頑張りと健気でひたむきな姿を思うだけで、心も温まる最高の食材だと私は考えている。ミツバチの素晴らしさをたくさんの人に知ってもらい、その上でハチミツを食べて欲しい。感動が何百倍にもなるはずだ。

 

(完)

 

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