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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

ミツバチとハチミツと

立春

 

 子供の頃、ハチミツは少し高価だったので、あまり食べる機会はなかったけれど、ミツバチは良く見かけた。
 小学校の学校帰りに、田んぼだったところに蓮華が咲いて、花冠を作る側で飛んでいた。
 祖父母の家の畑にねぎ坊主ができた頃には、いつもミツバチがそこに集まって、ゆらゆら飛びながら揺れていた。
 ミツバチの体にはよく、白だから黄色だかの粉が付いていて、見ていると危険だからそばに行かないように誰かが言っていた。小さい姿が可愛いので、あまり恐怖は無かったが、兄が刺されて大泣きして、ようやくあれは危険なんだと理解した。
 成長していくと、ハチミツを食べるようになってきた。ホットケーキがパンケーキと呼ばれ出して、バターと一緒にハチミツをかけて、一口にしては大きめに切った一切れをあふれないように飲み込む。甘い味と少しのしょっぱさと柔らかい感触が口に広がって、ハチミツは砂糖とも違う優しい甘さなのだと知った。
 一人暮らしを始めるとお菓子を作るようになった。砂糖の代わりに、ハチミツでクッキーを作る。まだうまく作れず、少し焼けすぎたクッキーはやや硬く、口の中には少しの甘さと鼻腔を抜ける金色の匂いがしていた。
 ハチミツが当たり前になった頃、ミツバチをとんと見なくなっていた。昔の田んぼには新しい家が立って、祖父母の畑は小さくなった。山や川は変わらないのに、春になってもミツバチはいなかった。
 一体、私はどこのハチミツを食べているのだろうか。それでも朝食べるヨーグルトの中に、私はハチミツを入れて食べている。

 

(完)

 

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