渡辺 碧水
【同タイトル(三)から続く】
ここで、別の説明例もいくつか加えておく。
前に、働き蜂が花蜜を集めるために生涯飛ぶ距離を採り上げた。ここでは、長い期間、多く飛ぶ算定距離の方で計算されたと思われる「東京からサンフランシスコまで」(太平洋横断)の説を検討してみる。
集蜜で働く蜜蜂の大変さを説明するために挙げる例なので、実は、この方がずっと多く引用されているように思われる。
「東京~大阪」の説明では約四百キロメートルだったが、この例では約一万キロメートル、二十五倍も多く飛ぶというもの。
この例示は最多の場合を想定して、一日の採蜜量を〇 ・五グラム(一回〇 ・〇五グラム×十回)、二十日間集めたとする。逆算して、一万キロを二十日間で飛ぶのだから、一日に五百キロ。一日に十回飛ぶとして、一回に五十キロ、片道二十五キロの道程(行動範囲)を飛んで花畑に行くことになる。
日照時間を十二時間とし、休みなく働くとしても、時速四十一 ・七キロで飛ばないと、往復の直線距離だけでも達成できない。とても無理な過大な話である。
この場合に集める「花蜜」は十グラム。実際の「蜂蜜」の量は四~五グラム。つまり、小さめのスプーン一杯分に満たないほどの量。「ティースプーン一杯分」(五グラム)などと言うのも、やや水増しでわかりやすい表現にしたものである。
他の説明例では、「蜜蜂は一回に、身体と同じくらいの重さの花蜜を巣に運びます。花を求めて片道二〜三キロの道のりを毎日二十~五十回も往復。蜜蜂一生をかけて集めた蜂蜜の量は、何とティースプーンで一杯にしかすぎません」とある。
また、ラジオ番組「全国こども電話相談室」で、相談員役の養蜂家は「西洋蜜蜂が一回の飛行で集めてくる花蜜の量は大体、三十ミリグラム(自分の体重の十分の一ぐらい)。蜜蜂が一生のうちに集める蜂蜜は、茶匙(ティースプーン)で三分の一ぐらい」(要点紹介)とも。
最初の例を含めて、理に適わない部分のあるやや誇張した説明だとわかった。
以上は、西洋蜜蜂の例を挙げたが、日本蜜蜂の集蜜量はさらに少なく、西洋蜜蜂の五分の一とも言われている。
改めて、蜂蜜は大変な貴重品であることが確認された。
(完)
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