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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

(無題)

ひーらームーン

 

 子どもの頃よく熱を出した。熱が出ると風邪だ。そう思われていた。風邪は体力勝負だと、食欲不振にもかかわらず、祖母は三分がゆを作ってくれた。それからデザートに紅玉の林檎を擦り下ろしてくれた。ところが酸っぱい。色も段 々とはちみつ色に変色していく。
 「おばあちゃん、色変った」
 すると祖母は「そうだね、じゃスプーン一杯だ」
 そう言ってツボから蜂蜜を掬って、大きな口を開けるぼくにとろとろと蜘蛛の糸のように垂らしてくれる。
 昔は蜂蜜は高級品だった。祖母はその高級品を大事に1年間保存する。1年経つと、蜂蜜の箱が蓮華畑に点 々と置かれる。祖母は出来たての蜂蜜を頂いてくるのだ。だから、祖母の蜂蜜は高級品。それに純度100パーセント。だからスプーンから淡い雪のようにさらさらとぼくの口に届く。これが蜂蜜の味。その蜂蜜が欲しくてぼくは熱を出していたのかもしれない。
 そんな蜂蜜の味に、大人になってからも出会わない。
 私は祖母が大事にツボで熟した蜂蜜の味を忘れないために、敢えて蜂蜜を避けているようだ。食べたいのを我慢して60年。そろそろ祖母のお墓にお供えしようか。祖母なら「食べていいよ。でも、擦った林檎を食べてからだ」と笑むだろう。

 

(完)

 

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