渡辺 碧水
【同タイトル(二)から続く】
蜜源である花群の咲き方や密集度の他に、季節や天候などもいろいろと関係するので、集められる花蜜の収量も大きく異なる。挙げる例は、好条件の下、健康で事故にも遭わず順調にフルタイムで働いて集めた場合である。
働き蜂の集蜜行動の範囲を抑え気味に二~三キロメートルとする。二キロを往復すると仮定すると、一回の飛行で四キロ、一日十回の飛行で四十キロ、確実性を考慮して実質十日間行うとして、四百キロを飛行することになる。(実際には、花畑で花から花へ小刻みに飛ぶ距離もけっこう多い)
この距離は、おおよそ「東京~大阪」に相当する。飛行総距離の「東京から大阪まで」の説は、こうして算出されたものである。
自分の巣箱の位置をきちんと覚え、外敵に襲われる危険を冒して遠くまで飛び、重要な仕事を果たすのは、ベテラン蜂が、老後のない一生の最期を全うする時期でもある。
外勤期十五~二十日で集める花蜜の総量は実質的に六~八グラムほどになる。
さて、集められた花蜜は、イコール蜂蜜ではない。持ち帰られた蜜は、花蜜の状態で四十五~七十%が水分である。長期保存の効くエネルギー源を確保するために、水分量を減らし、糖度の高い腐らない状態、つまり花蜜を蜂蜜にする作業が必要になる。
巣箱の中で待機している内勤の働き蜂に口移しで花蜜を受け渡す。
内勤蜂はまず、胃の中で糖をブドウ糖と果糖に分解して、巣房(貯蔵用の小部屋。巣穴)に詰める。そして、全体の羽で気流を生み出し、その風力で徐 々に蜜の水分を飛ばしていく。水分量が約二十%程度になった時点でようやく「蜂蜜」となる。
概算で六~八グラムほどあった花蜜は、水分量を減らすことによってさらに少なくなってしまう。一生懸命に働き蜂が飛び回って集めた花蜜も、一匹の生涯生産分量に換算すると、小匙(五ミリリットル)一杯分に満たないほどにしかならない。
こう説明されると、驚き、気の遠くなるような重労働が想像され、感心もし、感謝の気持ちで一杯になるだろう。
【同タイトル(四)へ続く】
(完)
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