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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂蜜は奇なり -父親の味-

雫石つみき

 

 私には約四十年もの間、心に染みついている弁当がある。要は三色弁当であるが、一般的によく知られている三色弁当は、炒り卵の黄色、鮭のほぐし身の赤色(ピンク色)、そしてインゲンの緑色、の三色弁当であるが、私の中の三色弁当は、炒り卵の黄色、タラコの赤色(ピンク色)、そして豚肉の茶色、の濃い味の三色弁当である。
 そもそもこの三色弁当は、父親が自分で作ってよく会社に持って行っていたお昼ごはんの弁当であった。そんな父親の三色弁当、私も何度も食べる機会があった。土曜日のお昼である。父親が三色弁当を会社に持っていく土曜日、父親は私の分も作って置いていってくれていた。だから私にとってその弁当のある土曜日は楽しみだった。
 私の父親は男手ひとつで私を育ててくれた。だから父親の三色弁当を食べるといつも仕事に行く父親の姿を思い出し、私が子供の頃の楽しみだった土曜日を思い出す。私にとって父親の三色弁当は単に懐かしい味ではなく、父親を思い出す濃い味付けの父親の味であり、父親の苦労の味である。
 ただ私は、三色弁当の豚焼肉は醤油とみりんで炒めるものだと思いこんでいたが、父親はハチミツを甘味として使っていたようである。それはある日、私が実際に豚焼肉を作ってみてわかったことだが、豚肉に対して醤油と砂糖、みりんでは父親の豚焼肉の味にはならないのである。それで家にあったごく普通のハチミツを加えてみると、当時の豚焼肉の味と照りになったのである。まさに「ハチミツは奇なり」である。砂糖、みりんだけではない味、それが父親の作っていた豚焼肉である。以来、私の中には父親の豚焼肉を含めた三色弁当のレシピが完成したのである。
 一昨年、私に三色弁当を作ってくれた父親は旅立ったが、我が家には父親が作ってくれた三色弁当のレシピが残っている。だからいつでも父親の味と出会うことができる。

 

(完)

 

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