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蜂蜜エッセイ応募作品

息子の『スプーン蜂蜜』

ハチマン

 

 スプーンの上にトロリと垂らし、こんもりとしたその液体をひとさじ口に入れる。
 「ん~~~!!」
 目を瞑ってシアワセそうに唸るのは私の息子だ。
 
 小学生の息子は蜂蜜が大好き。家ではスーパーのお安いやつしか買えなくて、それでも彼はウキウキとその金色のボトルを抱えている。お気に入りの食べ方は、ミルクティーにたっぷり入れるというもの。味がまろやかになって、なんだか香りもいいらしい。
 「お茶にしようか」
 と言うと、必ず彼は
 「ミルクティーにしよう!」
 と答える。そして蜂蜜のボトルを持ってきては、合法的(?)に、つまり母親の私に止められることなくたっぷりの蜂蜜を食べられる機会を楽しむわけだ。
 
 そんな息子の一番大好きな蜂蜜の食べ方というのが、私の父の家で食べる『スプーン蜂蜜』。
 私の父の家にはちょっとお高い、国産の上等な蜂蜜が常備してある。私も食べたことがあるが、なるほど、こうも味といい香りといい違うものなのだなと驚いた。
 その上等蜂蜜を、ティースプーンにタラリと垂らし、そのままぱくりと口に入れる。それが『スプーン蜂蜜』だ。
口に入れるなり、
 「ん~~!!」
 と息子は悶える。とびっきり甘くて、とびっきり美味しい。これが最高なのだそう。
 「ねぇ大パパ! あと一回だけ」
 息子はお願いポーズで私の父に甘えた。ちなみに大パパというのは私の父、息子にとってはおじいちゃんのこと。「まだおじいちゃんとは呼ばれたくない!」という意地っ張りの私の父が、孫が幼い頃から誘導した結果だ。
 
 もちろん大パパは可愛い孫に『スプーン蜂蜜』をおかわりさせてやる。
 ただこのおねだり、味を占めた息子が際限無く繰り返すため、今のところ『一日5スプーンまで』と決められている。

 

(完)

 

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