とも
夜な夜な舐める蜂蜜は沁みる。
子どもを寝かしつけた後、観られず溜まっていたドラマをつけて、コーヒーやホットミルクの入ったマグカップを用意。そして大きめのスプーンに乗せた蜂蜜。それをちょこちょこ舐めながら飲み物を流し込むと、蜂蜜でまったりとした口がコーヒーなら苦いと甘いの無限ループ、ミルクならまろやかな甘さに包まれてなんとも幸せな気分になる。それなら飲み物に混ぜてしまえばいいだなんて、そんな野暮なことは言わないで欲しい。蜂蜜独特の風味、ガツンとくる甘味、それでいてくど過ぎないこの味は疲れた身体に、心に、脳に染み渡る。昼間、イヤイヤ期の子どもがスーパーで寝転んで泣くのを抱えてお店を出た日も、時間をかけて作った離乳食をひっくり返された日も、トイレ掃除をいつもより気合いを入れてしたのにすぐ汚されても、この一口で癒される。ああ、なんてお手軽かつ背徳感のある幸せなのだろう。
だが、こんな姿家族には決して見せられない。普段子どもには食事のマナーについて口煩く注意しているくせに、ママはソファーでスプーン片手に蜂蜜を口へ。足りなくなったら追い蜂蜜でまた絞りだして乗せている。またある日には夫がトーストに蜂蜜を塗ろうとして、
「少なくなってきているから、子どもたち用に取っておくね。」なんて言われてしまうと、犯人は私ですとはとてもじゃないけど言えない。
「料理に使うから減るのが早いのかも。」
と、もっともらしい嘘をつくのである。実際使っているので、嘘ではないのだが、たいした量ではないのでやや良心が痛む。
そんな見られたくない思いもありつつ、一日の終わりにはつい蜂蜜を口にしてしまう。今日のリセットと明日も良いママ、良い妻になれるよう、この至福のひと匙はやめられない。
(完)
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