和田 みち子
3年前、96歳で亡くなった義母は、本当に健康に恵まれた人だった。頭もしっかりしていたし、常用の薬もなく、健康診断はオールA。
なによりすごいと羨ましかったのは、全部自分の歯だったこと。1本の入れ歯もなく、最後まで自分の歯で食事ができた。フランスパンもバリバリ噛んで味わっていた。亡くなる前に病院に入ったのが初めての入院だった。
だから、健康食品やサプリメントなどとは無用な生活をしていた。周りの人に元気な秘訣を問われても、昔ながらの普通の食生活をしていただけだったから答えようがなかった。
そんな義母だったが、私は一つだけ、これで健康を保っていたのではないかと、秘かに思っているものがある。
それは毎晩夕食のときに飲むお酒である。グラスに蜂蜜、レモン汁を入れ、焼酎を注ぎ、お湯で割る。よくかき混ぜて味をみて、甘みが足りないときは蜂蜜を追加する。甘酸っぱさがポイントだ。さらに飲むときは電子レンジで温め、それを飲みながら惣菜を食べる。365日欠かしたことはなかった。
旅行など出かけるときも小さめのポットに入れて持参し、お湯を足して飲んでいた。真夏でも冷たいビールは風呂上がりの一杯だけ、あとはいつもの通りの温かいお酒を飲む。
市販の缶チューハイとは違う、自分の好みの味に仕立てた温かいお酒は、知らず知らずに義母の体を温め、沁み入り、血流を良くし、健康に貢献していたのではないだろうか。
私は、それを「長寿のお酒」と名付け、月命日の16日には必ず仏壇に供えている。
そして下げた後は、今度は私が温めて飲む。義母のようにはいかないまでも、生きている限りは元気で過ごしたいという願いを込めて味わっている。
(完)
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