白貝ルカ
東京に蜂蜜の専門店が出来たと情報番組でやっていた。その蜂蜜店には30種類以上の蜂蜜を取り揃えていて、様 々な花から採取した蜂蜜を取り揃えているという。
スーパーに売っている一般的な蜂蜜しか知らなかった田舎者の私にとって、画面越しで見たその光景はテーマパークのように映った。
ある日、親に連れられて憧れの蜂蜜店に訪れた。試食として様 々な花から採れた蜂蜜を食べたが、幼い私はその美味なる違いが判らない馬鹿舌だった。
出来ることならば全ての種類の蜂蜜を買い揃えたかった。でも、そんな小遣いを持っていない。私はなけなしの小遣いでひまわりの蜂蜜の小瓶を一つだけ買った。
その日から私のおやつは蜂蜜になった。毎日ひまわりの蜂蜜を小さじのスプーンで掬い舐めた。甘い、甘い蜂蜜は私にとっては最高のおやつだった。
あれから時が流れ、大人になった私は再びあの蜂蜜専門店に訪れた。そこにはあの日の店構えのまま、蜂蜜専門店があった。
幼かったあの時と同じように蜂蜜を試食させてもらった。歳は取ったが蜂蜜の味が分からない馬鹿舌は変わらなかった。でも、幼い日、なけなしの小遣いで買ったひまわりの蜂蜜の味だけは覚えていた。私はあの時と同じように小瓶の蜂蜜を一つ買った。
(完)
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