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蜂蜜エッセイ応募作品

いのちの蜂蜜

相良文雄

 

 世界中が新型コロナとの戦いで苦闘している。未知のウイルスであれば当然かもしれない。この様子を見て思い出すことがある。
 今では想像もできないが、終戦直後、衛生上の問題もあり、様 々な疫病が流行った。通称「喉締め」というジフテリアもその一つ。現在ではワクチンもあり予防は万全だが、当時は罹患すれば命に係わる病だった。高熱を発し、気道が炎症でじわじわと狭まる。呼吸は粗くなり、咳は止まず、最悪、息が詰まり死に至る。
 私と弟はこれに罹った。私達は満州からの引揚者。落ち着き先が熊本の田舎だったこともあり、医療も十分ではなかった。村にたった一つの医院。そこに母子三人で通った。「気道確保が何より大事」と医師は言った。のどの炎症を和らげることだと。
 母はその言葉で、何かに気づいたようで、「少し待ってて」と、二人を家に置き、出かけた。一時間ほどで戻ってきたが、その手には薄茶色の液体の入った瓶が握られていた。「中通りの伯父さんに頼み込んで、貰ってきた。これをひと匙ずつ舐めるのよ」と。
 母は、伯父の家に、当時貴重だった蜂蜜があることを知っていて、自分の和服と引き換えに、拝み倒して貰って来たのだった。
 それを口にした時の感動は今も鮮やかだ。蜂蜜が体温で溶けながら、ゆっくり喉を通っていく。喉が潤い、咳が緩和され、呼吸が楽になって行った。弟も、その感触を味わっているようだった。「病は気から」ではないが、それをきっかけに、私達は快方に向かった。以降、弟ともども未だ健在である。
 蜂蜜にはそうした不思議な効用があるようだ。
 翻って、コロナである。ワクチンが開発され、特効薬も研究中。
「コロナで大変な時代もあったよね」と、昔話にできるような時代が一日も早く来ることを祈りたい。

 

(完)

 

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