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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

ひと匙no

アカシアで花束を

 

 乱暴に靴を脱ぎビジネスバッグを放り捨てると、大股で6歩、そのままベッドになだれ込む。
 心身ともに疲れ切った金曜の夜11時。
 何も考えられずに意識が眠りに沈みゆくなか、なぜか『働き蜂』という単語が頭に浮かんで離れない。
 
 『働き蜂』――。
 そう。朝から晩まであくせくと働き、家と会社を往復し、週末には泥のように眠るだけ。
 ふふ、まさに自分にお似合いじゃないか。
 
 ぼろぼろになった身体にムチを打って起き上がると、カップにミルクを注ぎ、電子レンジで少し熱めに温めた。
 蜂蜜を開け、スプーンに山盛りひと匙、絡ませる。
 膜の張ったミルクへ掻き回すと、心なしかミルクが微笑んだような気がした。
 
 カップをかたむけ、一口。
 ミルクとともに、蜂蜜の香りが遠くから身体に染み渡る。
 甘くて、けど、くどくはなく、自然と笑顔にしてくれる、懐かしい味わい。
 これだよ、これ。
 疲れたとき、おふくろがよく作ってくれたっけ。
 身体が欲しているのは、蜂蜜という優しさなのかもしれない。
 
 『働き蜂が一生のうちに運べる蜂蜜はスプーン一杯分』と聞いたことがある。
 人間はたったひと匙で、蜂の一生を掬い取ってしまうのだ。
 そう考えると、尊いものをいただいている気がして、丁寧に味わいながら飲み干した。
 身体の内側からぽかぽかと、蜂たちが元気づけてくれているようだった。
 よし、来週からまた、がんばろう。

 

(完)

 

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