渡辺 碧水
【同タイトル(四)から続く】
この注意喚起の表示は、食品表示法で義務化されているわけではないが、政府や都道府県は、食品事業者に蜂蜜及び蜂蜜を含む食品に注意喚起表示をするよう要請している。
「全国はちみつ公正取引協議会」は自主ルールによって、ほとんどの蜂蜜にその表示をしている。ただ、義務化されていないので、蜂蜜を使用した加工食品の中には注意喚起表示がないものも少なくない。
したがって、一歳未満の乳児を持つ親などの関係者は、表示の原材料名を確認するなどして、原材料に蜂蜜が含まれていない食品であることをきちんと確認して、乳児の口にこれらが入らないよう注意しなければならない。
蜂蜜では、一般的に菌が繁殖しないのだが、ボツリヌス菌だけは別。乳児は、まだボツリヌス菌(芽胞)への抵抗力が弱いので、乳児ボツリヌス症に罹り、命を奪われる危険性があるため、特に注意を要するのである。
「芽胞」とは固い殻に包まれた種のようなもので、熱や薬品に強い耐性を持っている。
蜜蜂が集める花蜜には、土壌中のボツリヌス菌(芽胞)が混じることがある。糖分が高い蜂蜜の中でボツリヌス菌は増えることはできず、芽胞という固い殻に守られて休眠している。一歳未満の乳児には、ボツリヌス菌(芽胞)をやっつける腸内細菌の準備がまだ整っていない。蜂蜜と一緒に芽胞を食べてしまうと、腸の中で芽を出した菌がどんどん増え毒素を出してしまうことがある。
便秘、吸乳力の低下、元気の消失、泣き声の変化、首のすわりが悪くなるなどの症状が乳児に現れて続くときは、乳児ボツリヌス症に罹った可能性がある。
乳児に蜂蜜を与えない理由は、蜂蜜が生ものだからではなく、ボツリヌス菌を食する危険性を完全に避けるためである。
芽胞に守られた菌は、熱にも非常に強く、百二十℃で加熱しないと死なない。だから、普通に加熱して蜂蜜を与えても、菌が生き残っているのである。
結論として、蜂蜜を一歳未満の子どもに与えないのは、ボツリヌス菌の体内侵入を完全に阻止するためである。
(完)
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