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蜂蜜エッセイ応募作品

初デートと蜂蜜で蜂デート

柴犬太郎

 

 「蜂蜜が好きなんよ。プチトマトにかけると美味しいけん。」好きなものを語ると方言が出た。
 初めてのデートだった。何を話せばいいかわからないので事前に話題を調べ携帯のメモに書き留めていた。その中の一つ、「好きな食べ物は何?」の答えを今でも覚えている。
 その当時は確か「今度食べてみるわ」と適当に無難に返した。結果から言うとその子には三回目のデートで振られてしまった。
 その事をふと思い返したときに彼女が言っていたプチトマトと蜂蜜がなんだか無性に食べたくなった。急いでスーパーに行きプチトマトと蜂蜜を購入した。なぜか心が躍った。
 
 家に帰るとすぐ小さな小皿を用意し、贅沢に蜂蜜を出した。蜂蜜はとろとろで透き通っていて、ぷうんっと甘い匂いがした。金色に夕焼けを混ぜたような鮮やかでキレイな色だ。
 
 「いただきます。」プチトマトを蜂蜜につけ一口食べた。安いプチトマトと蜂蜜はとても相性が良く、しょっぱさと蜂蜜の優しい甘さが口の中で広がった。簡単に幸せになれた。
 
 今思えばデートの後すぐに試して、彼女に感想を言えばよかったかもしれない。そうしたら付き合えたのかも、と一人でほくそ笑んだ。
 
 僕にとって蜂蜜は甘くて苦くてしょっぱいのだ。
 
 今でもたまに食べたくなる。

 

(完)

 

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